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【ビジネスリーダーのための菜根譚講座 その十】

1.功績の評価

『功過は少しも混ずべからず。混ずればすなわち人惰隳(き)の心をいだかん。恩仇ははなはだ明らかにすべからず。明らかなればそなわち人携弐(けいし)の志を起こさん。』(前集一三六)

 

(訳)功績と過失の評価をあいまいにしてはならない。そんなことをすれば、部下はやる気を失ってしまう。恩義や遺恨の感情をあからさまにしてはならない。そんなことをすれば、部下は離反の気持ちを起こしてしまう。

 

 リーダー部下功績を過小に評価すれば、部下はやる気を失うでしょうし、その功績を過大に評価すれば、怠惰になるでしょう。また、リーダーが部下の過失を見逃せば、部下は平気で不正を働くようになるでしょう。

 そして、リーダーが恩情や恨みの感情をあからさまにすれば、部下は不平等な扱いを感じ取り、心が離れていってしまうでしょう。

 

2.人格は才能の主

『徳は才の主、才は徳の奴なり。才ありて徳なきは、家に主なくして、奴事を用うるがごとし。いかんぞ、魍魎(もうりょう)にして猖狂(しょうきょう)せざらん。』(前集一三九)

 

(訳)人格は才能の主人で才能は人格の召使いに過ぎない。才能には恵まれても人格が伴わないのは、主人のいない家で召使いが我がもの顔に振る舞っているようなものだ。これでは、その家は妖怪たちが荒れ狂う屋敷と化してしまう。

 

 リーダーにいくら才能があっても人格が伴っていなければ、その才能は悪用され、社会に害を及ぼす恐れがあります。一方、リーダーに才能がなくても人徳が備わっていれば、才能ある多くの部下たちを使って立派な事業を成し遂げることも可能です。

 リーダーは、才能は他人が補ってくれても、人格は他人に補ってもらえないことを強く自覚して、人格的成長を最優先課題と位置づけるべきでしょう。

 

3.逃げ道を残す

『奸を鋤(す)き倖を杜(ふさ)ぐは、かれに一条の去路(きょろ)を放つを要す。もしこれをして一も容(い)るる所なからしめば、たとえば、鼠穴(そけつ)を塞ぐもののごとし。一切すべて塞ぎつくせば、すなわち、一切の好物ともに咬み破られん。』(前集一四〇)

 

(訳)有害な人間を排除するにしても、逃げ道だけは残しておかなければならない。逃げ道まで奪ってしまうのは、鼠の穴をふさいで退路を断つようなものだ。それでは、大切なものまでかじりつくされてしまう。

 

 「窮鼠猫を噛む」ということわざがあるように、人は極限まで追い詰められると何をしでかすか分からない危険があるので、たとえ悪人を追い払うときでも、逃げ道を残してあげることが、さらなる害悪の発生を防ぐことにつながるでしょう。

 リーダーたる者は、「罪を憎んで人を憎まず。」の精神で、過失を罰する厳しさと、人を慮る寛容さの両方を持ち合わせる必要があるでしょう。

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