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【ビジネスリーダーのための菜根譚講座 その九】

1.短所の対処法

『人の短所はつぶさに弥縫(ひほう)をなすを要す。もし暴(あらわ)してこれを揚ぐれば、これ短をもって短を攻むるなり。人の頑あるものは、よく化誨(かかい)をなすを要す。もしいかりてこれをにくまば、これ頑をもって頑をたすくなり。』(前集一二一)

 

(訳)人の短所は細やかな気配りでとりつくろってやらなければならない。むやみにあばきたてるのは、短所をもって短所を責めるようなものである。頑固な人間に対しては、上手に教え諭(さと)してあげなければならない。怒りにまかせて相手を憎めば、頑固をもって頑固を助長するようなものである。

 

 誰にでも長所短所がありますが、リーダーが自分の長所をひけらかし、部下の短所を責め立てれば、部下の長所を引き出すことができず、自らの人望も失うことになります。

 また、部下が頑なな態度をとっている時に、リーダーが感情的に叱責すれば、部下は反抗したり、やる気を失ったりするだけです。そんな時でも、部下の立場に立って、粘り強く丁寧に指導すれば、部下も心を開くようになるでしょう。

 

2.自覚力と意志力

『私に勝ち欲を制するの功は、識(し)ること早からざれば力やすからずという者あり。識りえて破るも忍も過たずという者あり。けだし識(しき)はこれ一顆(いっか)の昭魔の明珠、力はこれ一把(いっぱ)の斬魔の彗剣(けいけん)。両(ふた)つながらかくべからざるなり。』(前集一二五)

 

(訳)私情や私欲にうち勝つには、いち早くそれを自覚しなければ困難だといわれている。また、それを自覚して強い意志力を持てれば、私情や私欲を克服できるともいわれている。思うに、自覚する能力は魔物を照らし出す珠玉であり、やり遂げようとする意志力は魔物を斬り捨てる名剣である。両方とも、なくてはならないものだ。

 

 リーダー我欲感情に囚われて正しい方向性を示すことができなければ、組織を誤った方向に導くことになります。また、せっかく正しい方向性を示せても、強い意志力をもって実行できなければ、事を成し遂げることはできません。

 リーダーたる者には、自己を冷静に見つめて制御する克己心と、目標を達成するための強い意志力が必要になるのでしょう。

 

3.大局的な判断力

『群疑(ぐんぎ)によりて独見を阻むなかれ。己の意に任せて人の言を廃するなかれ。小恵を私して大体を傷(やぶ)るなかれ。公論を借りてもって私情を快くするなかれ。』(前集一三〇)

 

(訳)人々に支持されないからといって自分の意見を変えてはならない。自分の意見に固執するあまり、他人の意見を廃除してはならない。小さな利益のために、大局の判断を見失ってはならない。世論を隠れ蓑にして自己満足に陥ってはならない。

 

 多数の意見に流されて正しい考えを曲げてしまえば、誤った判断をてしまいます。一方で、自分の考えに固執しすぎると、他人の意見が聞こえなくなり、独善に陥ります。また、小さな利益のために理念を失えば、いずれ大きな損失となります。多数の意見と称して自己を正当化すれば、かえって自分を見失うことになります。

 リーダーたる者は、自分の意見をしっかり持ちながらも、他人意見を柔軟に取り入れ、目先の利益より、組織の大局的な利益のために、判断力を養っていく必要があるでしょう。

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