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【韓非子に学ぶ組織運営術 その一】

 「韓非子」は、古代中国の代表的な法家思想の書であります。人間を動かしている動機は利益であるとの冷徹な分析に基づいて、法律と賞罰等の運用術で政治を司ることを説いています。その教えは、秦の始皇帝や三国志の英雄、諸葛孔明にも多大な影響を与えたとされています。

 その「韓非子」の中から現代の組織運営においても大いにヒントになる言葉をピックアップして紹介いたします。皆様の経営の一助になれば幸いです。

 

1.五つの危険

『人主に五壅(よう)あり。臣その主を閉ざすを壅といい、臣財利を制するを壅といい、臣ほしいままに令を行うを壅といい、臣義を行うを得るを壅といい、臣人を樹(た)つるを得るを壅という。臣その主を閉ざせば、すなわち主は位を失い、臣財利を制すれば、すなわち主は徳を失い、臣ほしいままに令を行なえば、すなわち主は制を失い、臣義を行うを得れば、すなわち主は名を失い、臣人を樹つる得れば、すなわち主は党を失う。』

 

(訳)人の上に立つ君主には五つの妨げがある。臣下がその君主の耳目閉ざしてしまう妨げであり、臣下が財政を握ってしまう妨げであり、臣下が勝手に命令を下す妨げであり、臣下が勝手な理屈をとおす妨げであり、臣下が徒党を組む妨げである。臣下がその君主の耳目を閉ざせば君主は地位を失い、臣下が財政を握ってしえば君主は恩徳を施すことができなくなり、臣下が勝手に命令を下せば君主は統制がとれなくなり、臣下が勝手な理屈をとおせば君主は名分を失い、臣下が徒党を組めば君主は味方を失うことになる。

 

 経営者が人の上に立って組織健全運営するためには、防がないといけない五つの危険があります。

 一つ目の危険は、部下現場情報を経営者に隠すことです。部下は得てして良い情報は進んで報告するが、悪い情報は隠してしまいがちです。しかし、組織にとっては、悪い情報ほど、早く正確に報告されなければ、大きな問題に発展しかねません。報告が遅くなればなるほど、問題の解決はより困難なものになるからです。

 二つ目の危険は、部下財務を掌握してしまうことです。部下に財務の権限を与えすぎると、財政規律がゆるんでしまいます。さらに、経営者が部下に対して自由に褒賞を与えることができなくなり、部下の貢献意欲を低下させることにもつながります。また、部下の不正を生み出す原因にもなりかねません。

 三つ目の危険は、部下が勝手に命令を下すことです。部下が勝手に命令を下せば、指揮命令系統混乱し、組織秩序が保てなくなります。そうなれば、経営者が組織を統制するのが困難になります。

 四つ目の危険は、部下が勝手な理屈をとおすことです。部下が勝手な理屈をとおせば、経営者大義名分を失い、組織理念方針が、組織内で共有できなくなります。そうなれば、組織は方向性を失い、目標の達成が遠のくことになります。

 五つ目の危険は、部下徒党を組むことです。部下が徒党を組めば、組織内に反乱分子を増やし、経営者求心力が低下し、組織団結力を失い、組織が弱体化していくことになります。

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