〜「経営者の条件」より、"最も重要なことに集中する"〜
1.一つのことに集中する
成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない。
自らの強みを生かそうとすれば、その強みを重要な機会に集中する必要がある。
集中は、あまりに多くの仕事に囲まれているからこそ必要となる。なぜなら一度に一つのことを行うことによってのみ、早く仕事ができるからである。時間と労力と資源を集中するほど、実際にやれる仕事の数と種類は多くなる。
困難な仕事をいくつも行う人たちは、一時に一つの仕事をする。その結果、他の人よりも少ない時間しか必要としない。成果をあげられない人のほうが多くの時間働いている。
成果をあげる人は、多くのことをなさなければならないこと、しかも成果をあげなければならないことを知っている。したがって、自らの時間とエネルギー、そして組織全体の時間とエネルギーを一つのことに集中する。最も重要なことを最初に行うべく集中する。
2.過去を計画的に廃棄する
集中のための第一の原則は、生産的でなくなった過去のものを捨てることである。そのためには自らの仕事と部下の仕事を定期的に見直し、「まだ行っていなかったとして、今これに手をつけるか。」を問うことである。答えが無条件のイエスでないかぎり、やめるか大幅に縮小すべきである。人の強みという稀少な資源を昨日の活動から引き揚げ、明日の機会に充てなければならない。
自らが成果をあげ、組織が成果をあげることを望む者は、計画、活動、仕事を常時点検する。これは今も価値があるかを問う。答えがノーであるならば、仕事の成果や組織の業績にとって真に意味のある仕事に集中するために、それらのものを捨てる。成果をあげる者は、新しい活動を始める前に必ず古い活動を捨てる。
古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法である。あらゆる計画や活動を定期的に審査し、有用性が証明されないものは廃棄するようにするならば、組織において創造性は驚くほど刺激されていく。
3.優先順位(劣後順位)の決定
状況からの圧力は、未来よりも過去を、機会よりも危険を、外部よりは内部を、重大なものよりも切迫したものを優先する。圧力に屈したときには、重要な仕事が犠牲にされるのである。
延期した計画を後日取り上げても、もはやタイミングは狂っている。タイミングはあらゆるものの成功にとって最も重要な要因である。
優先順位の決定には、いくつかの重要な原則がある。全て分析ではなく勇気に関わるものである。第一に、過去ではなく未来を選ぶ。第二に、問題ではなく機会に焦点を合わせる。第三に、横並びではなく独自性を持つ。第四に、無難で容易なものでなく変革をもたらすものを選ぶ。
優先順位や劣後順位の決定は、常に現実に照らして検討修正しなければならない。
現在集中して取り組んでいる仕事以外のものにコミットしてはならない。現在の仕事を終わらせた後改めて状況を検討し、優先すべき次の仕事を選ばなければならない。
集中とは、「真に意味あることは何か」「最も重要なことは何か」という観点から時間と仕事について自ら意思決定する勇気のことである。この集中こそ、時間や仕事の従者となることなくそれらの主人となるための唯一の方法である。
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