〜人を説得する十二原則@〜
1.議論を避ける
「議論に勝つ最善の方法は、議論を避けることだ。議論は、ほとんど例外なく、双方に自説をますます正しいと確信させて終わるものだ。仮に相手を徹底的にやっつけたとしても、やっつけたほうは大いに気をよくするだろうが、やっつけられたほうは劣等感を持ち、自尊心を傷つけられ、憤慨するだろう。議論に負けても、その人の意見は変わらない。」
「議論したり反駁したりしているうちには、相手に勝つようなこともあるだろう。しかし、それはむなしい勝利だ。相手の好意は絶対にかち得られないのだから。理論闘争のはなばなしい勝利を得るのがいいか、それとも相手の好意をかち得るのがいいか、この二つは、めったに両立しないのである。」
「憎しみは、憎しみをもってしては永久に消えない。愛をもってしてはじめて消える。誤解は、議論をもってしては永久に解けない。気転、外交性、慰め、いたわり、そして、相手の立場で同情的に考える思いやりをもってしてはじめて解ける。」
「こちらに五分の理しかない場合には、どんな重大なことでも、相手に譲るべきだ。百パーセントこちらが正しいと思われる場合でも、小さなことなら譲った方がいい。細道で犬に出合ったら、権利を主張して噛みつかれるよりも、犬に道を譲った方が賢明だ。たとえ犬を殺したとしても、噛まれた傷は治らない。」
「意見の不一致から口論が生じないようにする方法、@意見の不一致を歓迎する。A自分の立場を守ろうとする本能に流されてはいけない。B腹を立ててはいけない。Cまず相手の言葉に耳を傾ける。D意見が一致する点をさがす。E自分の誤りを率直に認める。F相手の意見をよく考える。G相手が反対するのは関心があるからで、大いに感謝する。H早まった行動を避け、双方がじっくり考えなおす時間を置く。」
経営の現場においても、議論になりそうな場面に出くわすことが頻繁にあるでしょう。議論に勝つことにより得られる一時的な優越感や高揚感の誘惑に駆られて、安易に議論を挑んでも、相手のプライドを傷つけ自分のプライドを傷つけられて、結局、問題解決を困難にするだけなのでしょう。
例えば、顧客のクレームに対して、議論で打ち負かそうとすれば、顧客の信頼を失うばかりか、自社の改善の機会を失うことにもなるでしょう。また、従業員の提案を、気に入らないからといって、十分に検討もせずに、威圧的な言葉ではねつけようとすれば、従業員の士気も下がり、仕事の生産性も下がってしまうでしょう。
孫子の兵法にも「百戦して百勝しても、最善の策とは言えない。戦わないで敵を降伏させることが最善の策である。」とあるように、議論に勝って相手の恨みを増幅させるより、不要な対立を避けながら、謙虚に相手の言葉に耳を傾け、誠実に外交的手段で相互理解を深めることが、問題解決や、目標達成の近道なのでしょう。
|