〜「経営者の条件」より、"人の強みを生かす"〜
1.強みによる人事
成果を上げるには、人の強みを生かさなければならない。弱みからは何も生まれない。強みこそが機会である。強みを生かすことは組織に特有の機能である。
組織といえども人それぞれがもつ弱みを克服することはできない。しかし組織は、人の弱みを意味のないものにすることができる。
人事において重要なことは弱みを最小限に抑えることではなく強みを最大限に発揮させることである。
人に成果をあげさせるには「自分とうまくいってるか」を考えてはならない。「いかなる貢献ができるか」を問わなければなならない。「何ができないか」を考えてもならない。「何を非常によくできるか」を考えなければならない。
人の強みを探し、その強みを生かそうとしないならば、できないこと、欠陥、弱み、障害だけを手にすることになる。人のもたないものに基づいて人事をし弱みに焦点を合わせることは、人という資源の浪費である。
真に厳しい上司、すなわち一流の人をつくる上司は部下がよくできるはずのことから考え、次にその部下が本当にそれを行うことを要求する。
業績は、貢献や成果という客観基準によって評価しなければならない。
人に合わせて仕事を構築するならば、組織は情実となれあいに向かう。組織は公平さと非属人的な公正さを必要とする。
2.人事の設計
仕事は人の手によるものである。したがって不可能な仕事、人にはできない仕事をつくってはならない。
組織を評価する基準は天才的な人間の有無ではない。平凡な人間が非凡な成果をあげられるか否かである。
仕事は一人一人が、それぞれの強みを発揮するよう設計しなければならない。関わりのある強みが成果をあげられるよう、大きく設計することが必要である。
具体的な成果への期待との対比においてのみ、人の成果は評価できる。
強みを手にするには弱みを我慢しなければならない。
人ではなく仕事を問題にしなければならない。その仕事について強みをもつ者を探し、卓越性を求めた人事を行わなければならない。
仕事には最適の者を充てなければならないだけではない。実績をもつ者には、機会を与えなければけばならない 。
問題ではなく機会を中心に人事を行うことこそ、成果をあげる組織を創造する道であり、献身と情熱を創造する道である。
人事の失敗は、その者ではなくその者を任命した者の問題である。その仕事が合わなかったというだけで、他の仕事にも合わないということではない。
3.自らの成果をあげる
経営者は自らの仕事においても、まず強みからスタートしなければならない。自分のできることの生産性を上げなければならない。
自らが得意であると知っていることを、自ら得意な方法で行うことによって成果を上げなければならない。
経営者の任務は人を変えることではない。人のもつあらゆる強み、活力、意欲を動員することによって全体の能力を増加させることである。
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