1.手柄を譲る
『完名美節は、よろしく独り任ずべからず。いささかを分かって人に与うれば、もって害を遠ざけ、身を全うすべし。辱行(じょくこう)汚名は、よろしく全く推(お)すべからず。いささかを引いて己に帰すれば、もって光をつつみ、徳を養うべし。』(前集十九)
(訳)名誉を独り占めしてはならない。少しでも人に分け与えれば、危害を遠ざけ、身を全うすることができる。汚名を全て人に押しつけてはいけない。少しでも自分も被るようにすれば、才能をかくして、人徳を養うことができる。
手柄を人に譲り、失敗を人のせいにせずに、自ら責任を引き受ければ、謙虚で人徳のあるリーダーとなれるでしょう。
逆に、リーダーが手柄を独り占めして、失敗を人のせいにするようでは、尊敬を失い、誰もついて来られなくなるでしょう。
2.厳しすぎない
『人の悪を攻むるは、はなはだ厳なることなかれ。その受くるに堪(た)えんことを思うを要す。
人を教うるに善をもってするは、高きに過ぐることなかれ。まさにそれをして従うべからしむべし。』(前集二三)
(訳)人を叱るときは、あまり厳しすぎてはならない。相手がそれを受け入れられる程度かどうかを考える必要がある。人に善行を教えるときは、目標が高すぎてはならない。相手が実行できる範囲にとどめるべきである。
同じように指導しても、その成果は、相手によって全く違うものになることはよくあることでしょう。厳しい指導が、相手を奮い立たすこともあれば、やる気を無くすこともあります。高い目標が、相手のやる気を引き出すこともあれば、最初から諦めさせることもあります。
リーダーが、人を叱るときに、厳しく叱るより、相手に応じて相手が素直に受け入れられるように叱ることを考え、人に目標を与えるときに、高い目標を与えることより、相手に応じて達成可能な目標を設定することを考えることができれば、相手の向上心や能力を引き出すことができるのでしょう。
3.初心に返る
『事まり勢ちぢまるの人は、まさにその初心をたずぬるべし。功成り行満つるの士は、その末路を観んことを要す。』(前集三〇)
(訳)事業に行き詰まって進退きわまった人は、初心に立ち返って考え直すべきである。
事業が成功して頂点を極めた人は、その行く先を見定める必要がある。
リーダーたる者は、事業に行き詰まって進退きわまったときも、自暴自棄にならず、初心に立ち返り、失敗の原因を究明して、事業の目的を再設定して、打開を図るべきでしょう。
また、事業が大成したと思えたときも、傲(おご)ることなく事業の行く先を慎重に見定めて、事業の方向づけを行うことが、リーダーの責務でしょう。
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