1.トップマネジメントの役割
多元的な役割
トップマネジメントには、多元的な役割がある。
事業の目的を考えるという役割がある。「われわれの事業は何か。何であるべきか。」を考えなければならない。この役割から、目標の設定、戦略計画の作成、明日のための意思決定という役割が派生する。
基準を設定する役割、すなわち組織全体の規範を定める役割がある。目標と実績との違いに取り組まなければならない。主たる活動分野において、ビジョンと価値基準を設定しなければならない。
組織を作り上げ、それを維持する役割がある。トップマネジメントの行動、価値観、信条は、組織にとっての基準になり、組織全体の精神を決める。加えて、組織構造を設計しなければならない。
重大な危機に際しては、自ら出動するという役割、著しく悪化した問題に取り組むという役割がある。
あらゆる組織にとって、トップマネジメントの機能は必要不可欠である。問題はトップマネジメントとは何かではない。組織の成功と存続に致命的に重要な意味を持ち、かつトップマネジメントだけが行いうる仕事は何かである。
(2) 役割の特徴
トップマネジメントに課される役割は、各種の能力、性格を必要とする。少なくとも四種類の性格が必要である。「考える人」「行動する人」「人間的な人」「表に立つ人」である。
トップマネジメントとは何であり、何でなければならないかは客観的に規定される。その座にある者の流儀とは関係ない。
2.トップマネジメントの構造
(1) チームで行うべき仕事
トップマネジメントとは、一人でなくチームによる仕事である。トップマネジメントの役割が要求する様々な体質を一人で合わせ持つことは不可能である。
(2) チームワーク
@ トップマネジメントのメンバーは、それぞれの担当分野において最終的な決定権を持たなければならない。
A トップマネジメントのメンバーは、自らの担当以外の分野について意思決定を行ってはならない。
B トップマネジメントのメンバーは、仲良くする必要はない。尊敬し合う必要もない。
ただし、攻撃し合ってはならない。
C トップマネジメントはチームである。チームにはキャプテンがいる。キャプテンは、ボスではなくリーダーである。キャプテンの役割の重さは多様である。
D トップマネジメントには、チームとしてのみ判断しうる問題がある。事業の定義、既存の製品ラインの廃止、新たな製品ラインへの進出、巨額の資本支出を伴う決定などである。そして、主な人事である。
E トップマネジメントの仕事は、意思の疎通に精力的に取り組むことを要求する。各メンバーの自立性は、自らの考えと行動を周知徹底させているときにのみ許される。