1.新しい現実
今日、少なくとも先進国では、労働人口のほとんどは被用者である。彼らは一人ではなく組織で働く。
同時に今日、労働人口の中心は肉体労働者から知識労働者へと移った。あらゆる先進国で、労働人口のますます多くが、手だけを使って働くのをやめ、知識・理論・コンセプトを使って働くようになった。
2.仕事と労働
(1) 仕事と労働
仕事の生産性を上げるうえで必要とされるものと、人が生き生きと働くうえで必要とされているものは違う。したがって、仕事の論理と労働の力学の双方に従ってマネジメントしなければならない。働く者が満足しても、仕事が生産的に行わなければ失敗である。逆に仕事が生産的に行われても、人が生き生きと働けなけれ失敗である。
(2) 仕事とは何か
仕事とは、一般的かつ客観的な存在であり、課題である。そこには論理があり、分析・総合・管理の対象となる。
(3) 労働における五つの次元
労働は人の活動であり、人間の本性である。論理でなく、力学である。そこには五つの次元がある。すなわち、生理的次元・心理的次元・社会的次元・経済的次元・政治的次元である。
3.仕事の生産性
(1) 生産性向上の条件
仕事を生産的なものにするためには、四つのものが必要である。すなわち、分析・総合・管理・道具である。
(2) 成果を中心に考える
成果すなわち仕事からのアウトプットを中心に考えなければならない。技能や知識など仕事のインプットからスタートしてはならない。それらは道具にすぎない。いかなる道具をいつ使うかは、アウトプットにより規定される。作業の組み立て・管理手段の設計・道具の仕様など必要な作業を決めるのは成果である。
4.人と労働のマネジメント
強い者さえ、命令と指揮を必要とする。弱い者はなおのこと、責任という重荷に対して保護を必要とする。
アメとムチによるマネジメントはもはや有効でない。
心理学によって人を支配し操作することは、知識の自殺である。
仕事のうえの人間関係は、尊敬に基礎を置かなければならない。
5.責任と保障
(1) 三つの条件
働きがいを与えるには、仕事そのものに責任を持たせなければならない。そのためには、生産的な仕事・フィードバック情報・継続学習が不可欠である。
(2) 身分の保障
責任の重荷を背負うためには、仕事と収入の保証がなければならない。
6.人は最大の資産である
(1) マネジメントの権限と目的
マネジメントはもともと権力を持たない。責任を持つだけである。その責任を果たすためには権限を必要とし、現実に権限を持つ。
分権化によって、トップマネジメントはより成果をあげ、本来の仕事が出来るようになる。トップマネジメントの権限は、分権化によって増大する。
人のマネジメントとは、人の強みを発揮させることである。
組織の目的は、人の強みを生産に結びつけ、人の弱みを中和することにある。
(2) 人こそ最大の資産
「人こそ最大の資産である」という。「組織の違いは人の働きだけである」ともいう。事実、人以外の資源はすべて同じように使われる。
マネジメントのほとんどが、あらゆる資源のうち人がもっとも活用されず、その潜在能力も開発されていないことを知っている。
必要なことは、実際に行うことである。その第一は、仕事と職場に対して、成果と責任を組み込むことである。さらに、共に働く人たちを生かすべきものとして捉えることである。最後に、強みが成果に結びつくよう人を配置することである。 |