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【才覚よりも人格】

 京セラの創業者で名誉会長の稲盛和夫氏が、去る824日、老衰のため京都市内の自宅で死去しました。90歳でした。

 1959年に京都セラミック(現京セラ)を設立し、「アメーバ経営」とM&Aを武器に一代で京セラを世界的な企業に育てました。通信の自由化を機に84年に第二電電を設立して通信事業に参入し、KDDなどとの合併を経て現在のKDDIを誕生させました。2010年からは会社更生法の適用を申請した日本航空の会長に就任し、わずか28ヶ月で再上場へ導きました。

 経営者が自らの人格を高め利他の精神で会社を経営することの尊さを説くその経営哲学は、多くの経営者に影響を与え続けてきました。

 稲盛氏の著書『生き方』の中の言葉に「人の上に立つ者には、才覚よりも人格が問われるのです」とあります。

 ビジネスにおいては、売上を上げる技能、利益を捻出する技能、新技術を開発する技能、資金を集める技能など、なにかと目に見える成果を上げる”才覚”が持ち上げられ、目に見えない人格が過小評価されがちですが、人の上に立つ経営者に本当に必要なのは人格を高めることであることを、稲盛氏は説き続けました。

 どんなに素晴らしい才覚があっても、人格がなければ、その才覚は悪用されるでしょう。自身に才覚がなくても、人格がある者には、様々な方面の才覚を持つ者たちが集まってくるのでしょう。自らの成果を際立たせることではなく、組織成果を上げるために、そこに集まる人たちが才覚を開花できる環境を作ることが、真に組織の発展につながり、そのためには、経営者が絶えず自らの人格を高めてリーダーシップを発揮することが、最も大切なことではないでしょうか。

 稲盛氏が説き続けた人格に基づく経営が、未来に渡り、より多くの経営者に引き継がれていくことを、願ってやみません

 

2022.10.01

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