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【黴雨(ばいう)】

 梅雨の季節です。元々は中国で、雨が多く黴(かび)が生えやすい時期であることから、黴雨(ばいう)と呼ばれていたそうですが、同音でこの時期に実を熟すの字を黴に代えて梅雨(ばいう)となって日本に伝えられ、その後、雨露の露(つゆ)と重ね合わせて梅雨(つゆ)と言うようになったといわれています。

 カビといえば、家の中の湿度の高い所に繁殖し、家を傷めたり、人が吸い込むとアレルギーや喘息、肺炎などの健康被害にもつながったりするので、有害で嫌なイメージを持たれる方が多いようです。

 その一方、日本の食卓に欠かせない、みそ、しょうゆ、かつお節、漬物、酒、酢、みりんなどの発酵食品は、カビ(麹黴(こうじかび))を利用して作られるのです。ちなみに、日本人がよく食べる椎茸などのキノコ類もカビの一種だそうです。

 そもそもカビは、生物の不要になった有機物(排泄物、死骸、落ち葉など)を、無機物に分解し土に還す、生態系循環になくてはならない存在です。人間の都合で、悪者扱いされたり良い者扱いされたりするカビですが、自然の生態系の中で、自らの役割を全うしているだけなのでしょう。

 日本人は、そんなカビの助けを借りて、四季の移ろいの中で、日本独特の豊かな食文化を作りあげてきたのです。時代を超えて伝承される自然を活かし自然と調和する先人の素晴らしい知恵に思いをはせる今日この頃です。

2022.06.01

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