米国のいくつもの州で、新型コロナウイルスワクチンの接種率を高めようと、ワクチン接種者に大金が当たる宝くじを配布する施策がなされているようです。人々に望ましい行動を促すためにインセンティブを与える政治手法なのでしょう。
複数の選択肢の中から一つの選択肢を選んでもらえるよう、その選択が有利であるように見せる心理学的手法は、現代において、行政でも企業でも様々なシーンで活用されているようです。
良心に訴えて理解を求めるべきところを、利益で誘導して行動を変えさせることが、はたして誠実なやり方といえるのか疑問も残ります。場合によっては、人々が意図せぬ方向に誘導させられ自由な意思が奪われる危険もはらんでいるのではないでしょうか。
ドラッカーの言葉に「心理学によって人を支配し操作することは、知識の自殺である。」とあります。
社会全体で共有する目的の達成に必要な行動変容を促すためのインセンティブは、時として適切な範囲で必要なことは否めないのでしょう。しかし、人々が自らの行動を責任をもって健全な動機で選択できなければ、成熟した民主的な社会の実現は出来なくなるのではないでしょうか。
2021.07.01
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