2011年の貿易収支が1980年以来、31年ぶりの赤字に転落しました。赤字の額は2兆4927億円だそうです。東日本大震災による部品不足、欧州債務危機、円高、製造業の海外移転が輸出を減少させ、火力発電用の天然ガスの需要の増加が輸入を増加させたと言われています。
内閣も日銀も、貿易赤字は一時的なもので、定着したとは言えない、という趣旨の見解を出していますが、はたしてそうでしょうか。
欧州債務危機は構造的な財政問題に起因しており、製造業の海外移転は常態化した円高と労働コストの著しい格差等の構造的格差に起因しており、原発の依存率を下げざるを得ない状況では、エネルギーの輸入も構造的なものにならざるを得ない事等を考えると、貿易赤字を一時的なものと済ますことはできないでしょう。
一方で、2011年の海外直接投資収益は前年比34%増の3兆8136億円と過去最高を更新したそうです。2005年以来すでに、所得収支(≒海外投資収益)が貿易収支を上回る構図になっています。つまり、国内より海外で稼ぐのが、日本経済の現実となっているのです。
すでに変化した経済の現実を直視し、自ら変革していくのか、過ぎ去った古き良き時代の幻想にしがみつくのか、経営者は大きな岐路に立たされ、大きな選択を迫られているのではないのでしょうか。