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【止まらない円高】
 円高の勢いに止まる気配がありません。9月15日に1ドル82円台をつけたことを受け、政府・日銀は「断固たる措置」として、2兆円規模の為替介入を実施し、一時は86円近辺まで戻りましたが、10月30日の終値は80円40銭と、介入時の水準より更に円高になっています。政府の「断固たる措置」が無力であることを証明した形になりました。

現在の為替水準が行き過ぎた円高なのか、また、適正レートはいくらなのかについては、専門家でも全く意見が分かれ、この事をいくら議論しても不毛なようにも思えます。1年前、5年前、10年前、20年前の10月末のレートを見ると、それぞれ、90円、116円、109円、130円となってます。この事からも今の円高が急激な動きであることは明らかでしょう。

円高により、外貨決済を行う輸出企業は大きなダメージを受けるでしょうが、その反面、通貨の購買力が大きくなるメリットもあります。本当の円高対策とは、日本経済が円高メリット大いに享受し、諸外国がそのこと無視しえなくすることではないでしょうか。

一方的な利益解消するよう裁定機能が働くのが市場原理です。円高を利用して、海外企業M&A資源採掘権の取得、海外の優秀な人材への投資、海外不動産の開発、輸入の促進等々と同時に、国内サービス業の育成を図ることで、圧倒的な円高メリットを享受しながら、成熟国として産業構造転換を進めることも不可能ではないでしょう。そうすれば裁定機能が働いて為替安定にもつながるかも知れません。

日本経済に本当に必要なものは、市場介入のような古い体質温存するための目先に囚われた対処療法ではなく、人口構造社会構造変化国際社会の中での日本の役割等をふまえ、長期的ビジョンをもって経済構造改革するための根本治療ではないでしょうか。為替市場変化が、政治家にも経営者にも発想転換を迫っているのではないでしょうか。

(2010.11.01)

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