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【礼儀】
 新渡戸稲造の『武士道』の言葉に「信実誠実なくしては、礼儀は茶番であり芝居である。」とあります。 偽りのない真心のこもった礼儀でなければ、礼儀も見えすいた芝居でしかない、という意味です。
現代社会において、日本人の礼儀という名の美徳が衰退しつつあるような気がします。家族男女友人先輩後輩上司部下等々、それぞれの人間関係の間にわきまえるべき礼節があり、それによって保たれてきた人間関係の調和が崩れかけているような気がします。
物質的に豊かになり、文化が欧米化され、インターネットによる情報化が進んだこと等により、与えられることが当たり前になり、表面的な平等意識や権利意識が高まり、の見えないコミュニケーションが日常化したこと等が、真心を込めて礼節をもって人とおつき合いするという意識を低下させ、その結果、人間関係が希薄化しているのではないのでしょうか。
文明が発達し、社会複雑になればなるほど、権利関係も複雑になり、人間関係も複雑になるでしょう。おまけに日本経済が構造的に地盤沈下していっている現状をふまえると、社会における様々な利害対立が、ますます増加し、先鋭化することも想像できます。
高度成長期のような好景気は期待できなくとも、老若男女全ての人々が、明るく暮らせる社会にするために、人間関係円滑かつ強固にする真心のこもった礼儀という名の美徳が、見直されることを願ってやみません。

(2010.08.01)

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