政府は10月30日、中小零細企業向け融資や個人の住宅ローンの返済猶予をしやすくする ための「
中小企業金融円滑化法案」を閣議決定し、国会に提出しました。
借り手からの要請に対し、金融機関は条件変更にできるだけ応じる努力義務が課せられます。
しかし、すでに多くの中小零細事業者が、緊急保証制度を利用済みで、返済猶予で
きる企業は少ないとの意見も聞かれます。
融資の条件変更を促すために、国が損失を肩代わりする「条件変更対応保証制度」
も新たに設けられます。
損失の保証割合は融資額の4割に設定され、しかも既存の保証制度の適用を受けている企業は利用できないため、対象企業そのものが限定されそうです。
正直、政治的なパフォーマンスのために作った法案のような印象を拭いきれません。
また、借り手のモラルハザードを危ぶむ声も多く、問題の先送りのために、金融システムが脆弱化し、財政出動により財政赤字が益々拡大する恐れもあります。
健全経営に努める企業が納めた税金が、放漫経営をしてきた企業を救うために使われれば、正直者が馬鹿を見ることになり、国民は国を信用できなくなるでしょう。
P.F.ドラッカーの言葉に「企業は、社会や経済の許しがあって存在しているのであり、社会と経済がその企業が有用かつ生産的な仕事をしていると見なすかぎりにおいて、その存在を許されているにすぎない。」とあります。
新制度が社会や経済にとって有益な救われるべき企業のために機能することを切に願います。