芸能人の覚醒剤使用事件が連日マスコミを賑わせています。普通の人には到底手の届かない名誉や富を手にしても満たされない人間の性(さが)を 見せられると、人は幸福のために何をなすべきかという命題を、改めて突きつけられたような思いがします。
中国の古典、菜根譚の中の言葉に、「欹器(いき)は満つるをもって覆(くつがえ)る」とあります。器以上のものを入
れると器ごとひっくり返ってしまう、つまり、必要以上に満ち足りた状態は転落の元であるという意味です。人も器以上に欲を満たそうとすると堕落につながる
のではないでしょうか。
また、「人生、一分を減省(げんせい)すれば、すなわち一分を超脱(ちようだつ)する」ともあります。人生、何か一つ減らせば、その分だけ世俗の煩わしさから解放されるという意味です。人は得ることで幸福になれると思いこんでいますが、本当は棄てることこそ幸福の近道なのかも知れません。物質や情報が氾濫している現代社会においては、なおさら、そうなのかも知れません。