私がブダペストを訪れたのは、12月25日。恐ろしく寒い日でした。折しも、クリスマス休暇で、商店はすべてお休み。唯一、観光地である王宮は開いてはいたものの、併設されているさえ美術館という有様ででした。
ホントならウインドウショッピングでもして時間を潰すんだけど(これが旅行の一番のお楽しみなのに・・・)、それも叶わず、仕方がないので予定より早く、予約を入れたのより1本早い列車でウィーンへと戻ることにしました。行きの列車も空いていたことだし、予約なしでも席はあるよね・・・。

ブダペストの駅までやって来たものの、次の列車の出発まで数十分。待合室よりは暖かいだろう・・・と、列車に乗り込んだのはいいのだけれど、出発までまだ時間があるせいか、客室は真っ暗。どうやら、電源を落としているみたい。灯りが付いていないくらいだから、当然、暖房も入っていません。コートを着たまんまで腰掛けて、やれやれ。『オリエンタル・エクスプレス』と書いてあったのに・・・。ここが始発じゃないはずなのに・・・。暗闇で待つことしばし、ようやく灯りが点りました。それと同時に、ブォーンという暖房の音も。日も暮れてきたし、心細くなってきた頃だったんです。ホントにこの列車、先発でウィーンに出発するんだよね・・・って。

灯りがついたとほぼ同時に、なんだか車内が騒がしい!?。6人掛けのコンパートメント(個室)に座っていたのですが、廊下を大量の人たちが歩いていきます。軍服らしきものを着たお兄ちゃん達が、後から後へと。ここはハンガリー。ハンガリーで見る、軍服のお兄ちゃんというのは、なんだかちょっとね・・・。
よく見てみると、彼らはでっかい懐中電灯とドライバーを手にし、わいわいがやがや、ニコニコとなにやら楽しそう!?。ちょっと、どっきりしてしまいましたが、緊迫感がまるで見受けられないので、良しとしましょう。でも、その手にしているドライバーは一体!?。ま、まさか、さっきまで灯りがついていなかったのは・・・。しかし、そのちっちゃなドライバーで、巨大な列車に立ち向かうとは・・・
しばらく、彼らは行ったり来たりしていましたが、そのうちドンドンガンガンと音が聞こえ始めました。何を暴れているんだろう?と、不思議がる私の部屋にも彼らがやって来て、邪魔だから鞄を除けるように言うと、おもむろに懐中電灯を手にし、座席の肘掛け部分に足をのせて、天井にある蛍光灯のふたを開け、屋根裏(?)を覗き始めました。右も左も懐中電灯を当てて奥の方まで熱心に。

???? え!?何・何? そこに何が(誰が?)あるの?。一体、何を調べて回っているの?。何も異常はなかったようで、足を乗せた部分の汚れを丁寧に払って、「Thank you」ご協力ありがとう!、とさわやかな笑顔とともに、出ていったお兄さんでありましたが、ちょ、ちょっと、お兄さん!手ぶらだよ。おまけに天井を見ると、最初はきれいに並んで閉まっていた、蛍光灯のふたがずれていて天井が見えてるし。どう考えても懐中電灯を上に忘れていったとしか思えないし・・・。

こんなことでいいんでしょうかねぇ? 備品の点検とかないんでしょうか?
その後、何も起こらず、無事にウィーンへ到着することが出来ました。几帳面な私としましては、どうしてもあの天井のふたをきれいに並べ直したかったのですが、どこかで誰かに見張られていたら(誰に!?)、イヤなので放っておきました。
しかし、ホントにあれは何だったんでしょうかね? いつも、行なわれていることなのでしょうか。ちょっぴりドキドキしてしまいました。それにしても、どうなるんだろうね、あの懐中電灯。