26/12/2001 Mercoledi' 12月26日水曜日

昨夜も夜中に目が覚めて眠れなかった。だから、今、本当に眠い。本気で、この後、昼ご飯を食べなくちゃいけないんだろうか・・・。

12月25日がナターレなのは、当然、私は知っていた。この日は、家族はファブリッツィオの実家で食事。なので、24日の夕食をフランチェスカの家族で集まって食べたんだと思っていた。だって、いつもよりゴージャスな内容だったんだもの。今日、12月26日があろうとは、思いもしなかった。

11時頃、フランチェスカと子ども達と徒歩でひいおばあちゃんの家へ向かう。「ファブリッツィオは車で先に出かけちゃったからぁ」って。この道中、私はすごく胸焼けがしていて、本当に今からお昼ご飯を食べに行くのぅ・・・っていう思いでいっぱい。家に入るなり、わぁ、いい匂い!。今日はラザーニアなんだ!。でも匂いを嗅ぐだけで、胸焼けが酷くなるから、キッチンから遠ざかりたいんだけれど、フェデリーコが嬉しそうに、「ハァナコゥ!来てぇ!見てぇ!ほら、今日はこれを食べるんだよー!でも、僕はフンギ(きのこ)は、嫌いだからよけて食べるのー」

しばらくして、ロレンツォが私の所へ走ってきて、「ハナコ!マティータ!」。えぇ??何?。マティータ、鉛筆!?。「はぁ??」。「ラ・カルタ・ディ・ツィーオ!」。んん??。おじさんの紙、がどうしたって!?。キッチンを覗きに行くと、ツィオ・フランチェスコが、猫を抱いて立っていた。あぁ、“マティータ(鉛筆)”じゃなくて、“マティルダ(彼の猫の名前)”。そして、“ラ・カルタ(紙)”ではなく、“ラ・ガッタ(猫)”って言ったのね。私、食べ過ぎで、完全に頭と耳がおかしくなってるわ・・・。

フランチェスカのおばさん夫婦と従姉妹のベアトリーチェが到着し、昼食が始る。従兄弟のジャンルカは来ないのか(彼はハンサムなので、私は会うのが楽しみ)、残念。

最初にやって来たのは、フンギのホワイトソースのラザーニア。フランチェスカが取り分けてくれたんだけれど、お皿からはみ出しそうだ。日本のランチだと、これに小さなサラダとコーヒーがついて850円、っていうところか?。要するに、これがメインだ。このラザーニア、とっても、とってーも!美味しかった。幸せ・・・。そして、ラザーニアがもう1種、運ばれて来る。今度のはトマトソース。ラザーニアの皮にミンチを包んで、上にトマトソースがかかっている。これも美味しい!。でも、おかわりは、欲しくない・・・。おかわりを食べているのは誰だ?。私以外の全員だ・・・。

そしてメインは、宣言通り今日もお肉。鶏肉をオレンジの皮と一緒にローストしたもの。美味しい!。この鶏、きっとおじいちゃんの家の庭を走っていたあの子だ。だから、肉そのものがとっても美味しい。その隣には、もう1種類肉が置かれているけれど、これは普通のロースト。過去、何度も食べたことがあるから、今日は食べない。レタスのサラダを食べて、ヴィーノを飲んで、お腹いっぱいだ。その時、離れたところから、ひいおばあちゃんが、「フランチェスカ!アンナに肉を取ってあげなさい!」と。キャー、私の隣はベアトリーチェとロレンツォだったので安心していたのに。あんなに遠くからひいおばあちゃんが・・・。「小さいのを・・・」と呟く私に、ファブリッツィオが、「ノン・グラッソ!」。そうか?いくら脂がないって言ったって、肉は肉でしょう。あ、でも確かに、脂が全部落ちていて、あっさりして食べ易い。これも美味しい。でも、これでバスタだからね。

ここで、私は気が付いた。私の隣に座っているベアトリーチェの皿に山と積まれた残骸(肉の骨、という)を見て、気が付いた。彼女は美人で、決して太っているわけではない。フランチェスカは、それほどたくさん食べる人ではないので、今まで気がつかなかった。これが、イタリアでの『普通』なんだ。なるほど、みんなは私にこれを期待しているのか・・・。それで、私が遠慮していると思って、あんなに親切に『食べなさい総攻撃』をしかけてくるんだ。しかしそれは、無理というもの。本当に勘弁してください。そろそろ、フランチェスコにも、彼の恋人のイタリア人と私は違う種類の生き物である、ということに気が付いてもらいたいんだけれど・・・。

そしてお皿が片付けられ、しばらく休憩。あぁあ、また食べ過ぎたな・・・と放心していると、フランチェスコが「ここに来い!」と自分の隣を。私のコップも取って来て、ヴィーノを注ぐ。本当に、こんなところも、日本のお正月とそっくり。小さい頃、親戚が集まって過ごしたお正月がなんだか懐かしいや。ファブリッツィオがスプマンテを持って来て、「まだ、ヴィーノを飲んでるのか!」と。「君はいつもヴィーノを飲んでる」。いや、決してそんなことはない。タイミングが悪いだけだ。スプマンテを飲みながら、やっぱりパネットーネ。そして、昨日、ファブリッツィオのお母さんのところからもらってきた、ドライフルーツの入ったパンのようなケーキ。フランチェスコは、「君は少ししか食べない。そして少ししか飲まない。それは良くない」と。まだそんなことを言うのか。一応、「食べている」と訴えてみたけど、やっぱり聞いてはもらえなかった。そして、それの何が、良くないんだ。

カフェで食事はお終い。フランチェスコのために、グラッパも一緒に運ばれてくる。私はお酒に詳しくないので、よく分からないのだが、いつも彼がカフェに入れるアニーチェというお酒は、グラッパではないらしい。「これはアニーチェ」とのこと(私は透明なお酒は全部グラッパというんだと思ってた)。このアニーチェはカフェに入れて飲んで、その後、グラッパを飲む。でもこれは、イタリアの一般的な習慣なのかどうかは不明。きっと、彼だけの、またはこの地方だけの習慣だと思う。私のカフェにもアニーチェが入れられる。「多かった?」、「うん」。だって、いつもの3倍位は入った。私が「眠い」というと、「コルソをしていないだろう」。はぁ?「コルソってなにぃ?」、「ジナスティカ(運動)をしてないだろう。そして食べてばかり。だから疲れる」。あぁ、もう、分かっているのなら、私に肉を食え!って言うなよ・・・。この人、なにを言っているのか私には分からない・・・。私、もう、理解出来ない・・・。そして、今は、理解しようという気も起こらない。あぁ、本当に疲れた・・・。はぁ、私は、年越しそばが食べたい。

あ、今、何か聞こえた。ファブリッツィオが、今日はここで晩ご飯を食べると言っていたように思う。そうなんだ、知らなかった・・・。私、夕食後にフランチェスコと彼の同僚のロレンツォとアンコーナへ行くんだけれど、ということは、私は、今日はここにずーーーーっと、いるわけだ。出かけるのはどうせ10時頃だろうから。今日もお昼寝は出来ない。胃薬を飲むことさえ出来ないのか。どうして私、胃薬を携帯していないんだろう・・・。

7時頃、フェデリーコとロレンツォと遊んでいる私に、ひいおばあちゃんが「アンナ、お腹空いた?」って。と、とんでもない!空くはずないじゃない。「少ししか食べないのねぇ」と言うので、「たくさん食べている」と答えると、ロレンツォが「ノー!ハナコは少ししか食べない!」。き、君までそんなことを言うのか。ロレンツォにまで言われたら、この家には私の味方は誰もいないじゃないか(ま、それまでロレンツォが味方だったわけじゃないけれどさ)。しかし、そのあと、彼はこう続けた。「でも、今日のお昼は僕はハナコより少ししか食べなかった」。あ?ならいいじゃないか。私、たくさん食べたんじゃないか。「ホントに?ラザーニアでしょ、肉は食べた?」。そして、「パネットーネは?」と聞くと、「それは数には入れない」だって。なんでやねん!この子達、レゴで遊びながら、夕方のうちに、机の上に残っていたパネットーネを全部、平らげてしまっていた(かなりたくさん残っていた)。そして今、お腹が空いたらしく、キッチンに走って行っては、「肉を食べてきた」と戻ってくる。肉をつまみ食いしているという事は、夕食も肉なのか。

8時頃、夕食開始。キッチンへ行くと、フランチェスカとおばあちゃんが私に、「フルーツを食べる?」って。リンゴ1つを食べて、それでOKにしてもらえるのならば食べるけれど、きっとその後で肉を食べさされるんだろ。フルーツだけでいい!と言ったって、聞き入れてはもらえないんだろう。だったら、食べない。本当に何も食べる気がしなくて、椅子に座って放心してしまっていた。「サラダは?」と聞かれたので、それをいただくことにする。ここは本当に野菜が美味しい。どの野菜もたくましくて本当の味、って気がする。今日のレタスも美味しかった。なんだか、味が濃くてしっかりしている。どうして日本の野菜とこんなにも違うんだろう。「お肉は食べないの?」という声が聞こえて我に返ると、ひいおばあちゃん、フランチェスカ、フランチェスコの3本のフォークが、私にどれを食べさすかを選んでいた(私、おばあちゃんの家での食事の際は、本当にただ座っているだけ。誰かが食べ物を取ってくれて、そして誰かが誰かに「取ってあげて!」と言ってくれる。ありがとう)。これは、「ポッロ(鶏肉)に似ているけど、ポッロじゃないのよ」とフランチェスカ。あぁ、思い出した。以前に彼女が私に教えてくれた。名前は忘れちゃったけれど、鶏をナターレ用に太らせるんだと。これはナターレにしか食べないものなんだとか。少し前に、テレビのニュースでも見た。ふーん、七面鳥じゃないんだ。

お肉をいただいて、ヴィーノを飲んで、食べることだけで疲れ果てたので、テレビの画面をぼんやりと眺めていると、「アンナ」って声が聞こえた。振り返ると、ひいおばあちゃんがパネットーネのお皿を私の目の前に差し出して微笑んでいる。やっぱり、まだ食べるの?。フランチェスカは、無言で、さりげなーく私の前にキウイを置いて去って行った。え?これ何?フランチェスコに食べさすの?違うよねぇ・・・。そして、スプマンテ。私、この後、出かけるから、ビール2杯分の隙間を胃に確保しておかなきゃいけないのよ。