あぁ！しまったぁ！や・やられたぁ！ と、思った時には、もう既に遅いんですよねぇ･･･。 ２年振りのローマ。７月初旬のの神戸はまだ涼しかったのですが、ここローマはすっかり夏。猛暑でした。直前に甘いジェラートを食べて、私の頭もジェラートのように溶けかかかっていたようです。イタリアは治安が悪いから、スリが多いから･･･と、読むもの聞くものすべてこのことばかり。しっかりと肝に銘じてこれまでは旅していたのですが、今回ばかりは違いました。ちょっと、うっかりしてしまいました。 関空からローマへ向かう飛行機は、トイレの隣の席。始終バタバタして、機内ではほとんど寝れずじまいでした。その上、日本から予約を入れて泊まったホテルが、これまた暑くて。私が背伸びをしてやっと届く高さに、３０センチ平方に満たないような小さな小さな窓が申し訳程度に１つあるっきり。暑いぃ･･･寝苦しいぃ･･･と、またもや、ほとんど寝つけずに朝を迎える羽目に。 とりあえず、クーラーの効いた部屋でぐっすりと眠りたい･･･と、その思いだけでローマの町へと繰り出しました。エアコン付きの部屋なんて、私にとってはものすごく痛い出費ではありますが、とにかくぐっすりと眠りたいと、テルミニ駅のすぐそば、目についたARISTON　HOTELのドアを開けました。星が４つもついている高級そうなホテルだったのですが、値段を聞いてみると、９０，０００リラ（約５，９００円）と思っていたより安い金額。あまりの安さに、「その部屋、アリアコンディツィオナータ（クーラー）は付いてる？」と、確認しちゃいました。ひとりだったし、当日の宿泊だったから安くしてくれたんでしょうね。		お昼寝して、１４：００頃から遊びに出かけることにしました。テルミニ駅のマクドナルドで昼ご飯を食べて、そのままバスで、ヴェネツィア広場へ。そこから、サンタ･マリア・ダラコエリ教会→カンピドリオの丘→フォリ・インペリアーリ→フォロ・ロマーノと歩いて、コロッセオに向かおうとした時に、それは起こりました･･･。 フォロ・ロマーノからコロッセオに向かう道は、運悪くちょうど工事中でした。フェンスで左右を仕切られた細い仮設の道を歩いていると、向こうからジプシーの親子がやってきました。赤ん坊を抱いた母親と、１２〜３歳の少女。小銭を恵んでくれ、としつこく私につきまといます。追い払おうとするのですが、腕や服を引っ張ったり、ホントにしつこい。ジプシーに囲まれたら腹を蹴れ！とガイドブックにで読みましたが、それには赤ん坊が邪魔！（←このための赤ん坊なんですよね）。 フェンスで左右を仕切られているため、逃げることが出来ず、前後に人影はなし。しばらくもみ合い、ふと気がつくと、私の鞄のファスナーが開いている！。 ヤバイ！やられた！と、顔を上げると、既に母親はいませんでした。目の前が真っ白になりましたが、落ち着け！私！。少女がまだここにいる。母親（本当の親子ではないと思いますが）が、私のポーチを持って逃げ去ったのに気を良くしたのか、なぜだか彼女は逃げようとしません。しつこく私にまとわりついて、どうやら私の腕時計を狙っている様子。 私はかなり動揺していたのですが、この子を逃がしたらどうにもならないと、「私の鞄は？」「盗ったでしょ？」と、「知らない！」を連発する少女に詰めよります。すると、道の先から人が近づいてくるのが目に入りました。恐らく、コロッセオに向かう観光客だと思うのですが、助けてくれるに違いがない！と、気配を察し逃げようとする少女の腕をつかみ、「アイウート！」「ヘルプ・ミー！」「助けて！！」イタリア語・英語・日本語、全部混ぜて叫びまくってやりました。
助かった･･･と思ったのもつかの間、私の背後にむちゃくちゃ体の大きな黒人の男性が･･･。こ・こいつもグルなのか･･･と最初は思い、ホントに目の前が真っ暗になりかけたのですが、それにしては様子が変かも・・・。 実は、彼は私の叫び声に気づいて駆けつけてくれた正義の味方でした。疑ってゴメンナサイ。本当に助かりました。でも、最初はホントに本当に怖かったんですよ。親玉がやってきたのかと・・・（笑）。 私たちがもみ合っているのに気が付いた、コロッセオの付近の屋台で土産物を売っているシニョーラと彼が助けに駆けつけてくれたのでした。私がたどたどしいイタリア語で経過を説明すると、犯人の少女にシニョーラが詰め寄ります。「知らない」「何も持ってない」と言い張る少女。しかし、そいつが盗ったのは明白です。ちなみに盗られたものは、パスポート、トラベラーズチェック１万円分、日本円２万円、クレジットカード。普段はこんなに持ち歩くことはないのですが、たまたま両替をしようと、現金を持っていたんです。「何も持ってない！」と、シャツをめくって見せ、潔白を主張する少女。そして、シニョーラが何か叫ぶと、同じ年頃の少女が４人ほど集まってきました。これには、本当に驚きました。な・なんなんだ、こいつら。今までどこにいたんだ？ あくまでシラを切り続ける少女達をシニョーラが叩いたり怒鳴ったり。２０分はかかったでしょうか。ついに白状しました。盗んだ私の貴重品入れを差し出したのです。中を確認してみると、入っていたのはパスポートだけ。現金とカードがないと言うと、またシニョーラが叩いて怒鳴って･･･。結局、一人の少女が日本円を、もう一人がＴＣを、別の一人がクレジットカードをと、見事な役割分担で隠し持っていた私の貴重品、すべて取り戻すことが出来ました。助けに来てくれた２人のおかげです。もう、なんてお礼を言ったらいいのやら。現金は諦めるから、なんとかパスポートだけ･･･と覚悟していたので、全て戻ってくるなんて、もう奇跡としか思えません。 「ローマは本当に治安が悪いので気を付けなさい。今回は良かったが、次からは絶対に戻って来ないよ。」はい。私もそう思います･･･。今回は本当に運が良かったです。彼が言うには、「ローマにいる間は、鞄に貴重品を入れてはいけない。首から下げておきなさい。」それと、「イタリア人は悪くない。あいつらは外国人だ。外国人には気を付けなさい。」と。 でもでも、日本から来た私には、イタリア人と外国人との区別が分からないんですけど･･･。 こいつに逃げられたら最後、と少女の腕をつかんだときから、もう夢中だったのですが、彼の話を聞いている間中、足が震えてきました。だって、本当に怖かったんですもの。何度も何度もお礼を言って心臓をバクバクいわせたまま、ホテルへと帰ってきました。 緊張と疲労でもうクタクタだったので、まだ６時頃でしたが、ちょっと一休み。ベッドに横になり、ウトウトと眠りにつきかけた頃、ドアをノックする声で目が覚めました。男性の声でホテルがなんとか言っています。慌てて服を着て、ドアを開けようとすると･･･ドアが開かない！？		部屋は普通の鍵だったのですが、私、よっぽど動転して帰ってきたんですね。９０度くらい回せばいい鍵を１４０度ほど回してしまったようなんです。こういうのも、火事場のくそ力っていうんですか？。固くて固くて、私の力では開けることが出来ません。「Chiave e' non funziona!　鍵が壊れてる！」この言い方が正しいかは分かりませんが、ドア越しに叫びます。「Non posso aprire!　開けられない」、ノックはしつこく続きます。いったい、何の用事なんだろう？もしや火事かなんかで、？逃げろってことだったらどうしよ？。しかし、開かないものは開かないので、「I cannot open!」と叫んでると、、オジさんは諦めたのか去って行きました。 鍵が開かないというのは、一大事なんですが、まだ眠たかったのでもう一度寝ることにしました。充分に寝た後でフロントに電話して助けにきてもらおうかと思って･･･。で、ベッドに入りなおしたとき、今度は、な、なんと、窓を叩く声が！ おいおい、ここ４階やろぉ･･･、と思いながら返事をすると、さっきのオジさんが今度は窓を開けろと言ってます。なんなんだ、このホテルは、と思いつつも、仕方がないので窓に手をやると窓も開かない･･･。私は閉じ込められたのか！。「Non posso aprire!　開けられないよぉ！」とまたもや叫ぶと、後ろに下がって、とオジさんの声。イヤぁな予感がしつつも後ろに下がると、ガンッガンッとオジさんが窓枠を蹴る音がして、ドサッドサッとコンクリートらしきものが落ちる音が･･･。なんなんだ、このホテルは！ これで開けてみて！と言うので、窓を引っ張ると今度はすんなりと開きました。その窓から、革靴を真っ白にしたオジさんが、満面の笑みでチャオ！と部屋の中に入ってきました。後で、窓の外を覗いてみると外壁の工事中でした。組んであった足場をたどって４階だというのに、オジさんはやって来たようです。それにしても、外壁の工事をしながら、窓にもコンクリートを塗って開かないようにしてしまったのか？。それでいいのか、イタリア？。 そして、部屋に入ってきたオジさんは、一目散にドアへ向かい、鍵を･･･、うーん。えーい。うーん･･･と、精一杯のの力を込めて開けてくれました。あれじゃぁ、私には開けられません。ホントに、どれだけの力で閉めたのだか。 そして、オジさんは鍵を開けたあと、ドアの横にあるエアコンのスイッチを指差して、「うん。ちゃんと動いているね。温度調節はこうするんだよ。」と、エアコンの使い方を教えてくれて、そのまま笑顔で去っていきました。え？こ、これが用事だったんですか？。鍵を開けてくれたのはとても有難たかったんですけど、そもそも最初にやって来た目的は何だったんだ。 ホントに、いったい、なんなんだ！この国は。 >>back