リカルド推定3歳は、マンマが大好きなおチビさん。朝、幼稚園まで送ってきてくれたマンマの姿が見えなくなった途端、「マンマ〜!マンマ〜!!」と、この世が終わるかと思わせるほどの大泣き。ま、確かに彼にとって、マンマが居なくなるということは、この世が終わることに等しいのでしょうけれど。

仕事をしているマンマに替わって時々、ノンナ(おばあちゃん)が幼稚園まで送ってくることがあります。マンマに比べ、時間が自由になるノンナ。1時間ほど、リカルドの横に座って相手をしていることがあり、ノンナがいる間は、ご機嫌で遊んでいるリカルド。しかし、ノンナが帰ってしまうと、またもや、「マンマ〜!マンマァ!!!」の号泣が始まります。

私が彼に出会ったのは3月のことでした。新学期は10月から始まるので、もう半年もこれが続いているということなのか!?。毎朝のことなので、先生もすっかり慣れっこ。敢えて、リカルドを特別扱いにあやしたりはしません。要するに、早い話が放ったらかし(笑)。






この日も、数十分間も泣き続けるリカルド、「よく泣くわねぇ。じゃ、ハナコの横に座ってなさい。」と、先生が私の前に彼をぽーんと置いて去って行きました。子どもの扱いに慣れていない私、な・なにをするねん!と一瞬ぎょっとしちゃいましたが、それ以上にぎょっとしたのがリカルド本人。

なんと、驚きのあまり泣き止んでしまいました。彼にとって初めて見るアジア人。恐怖のためか、好奇心なのかは分かりませんが、涙はぴたっと止まり、私を恐る恐る見つめています。まだ涙がいっぱい溜まった目で、訝しげに私を見つめ、ひとこと。

「キ セイ? 君は誰?」

私は日本人、と答えるべきか、先生、って言った方がいいのかな??と私が迷っていると、彼は更に訝しげな表情になり、

「セイ マンマ? 君はマンマなの?」

これには、間髪入れずに、ノー!!と叫んでしまった私に、畳み掛けるように、

「じゃ、ノンナ(おばあちゃん)なの?」

確かに、まだ彼の短い人生の中で、彼が知っている女の人といえば、マンマとノンナだけなのかも知れませんが、どうして彼の頭の中にマエストラ(先生)という選択肢はなかったんだろ?。





ま、ともかく、これで、彼の中で、マンマがいない寂しさより、私への好奇心がすっかり勝ってしまったようです。あら、泣き止んだのね、と通りがかった先生もビックリ。その先生に、おしっこに行きたいと訴える彼。先生が、「私と行く?それともハナコに連れて行ってもらう?」と聞くと、なんと私を指差すじゃないですか。そんなになつかれても、私、困っちゃうんですけど・・・(笑)。

これは私の仕事ではないはずなんですが、見よう見まねで連れて行ってみます。トイレに入って、ズボンとパンツを下ろしてあげればいいんだよな・・・。そこへ元気一杯に飛び込んで来たのは、同じクラスのルカ3歳。彼の世話も焼かなきゃ行けないのか・・・という思いが一瞬、頭を過ぎりましたが、彼はとってもやんちゃで、3歳とは思えないほどしっかりとした男の子。つい、「君はひとりで出来るよね?」と口に出ちゃいました。

すると、泣き虫リカルドが、

「どうしてぇ?」

そんなことを聞かれたってねぇ。同い年とは思えないほどの、いたずらっ子ルカと、泣き虫リカルド。ルカは初日、すごい勢いで私に飛びかって来て、私の腕のブレスレットを引き千切ったヤツなんですから。

リカルドの問いに何か答えなきゃと、
「彼はブラーボ(良い子)だから」と、言うと、、
「僕だって、ブラーボだよ・・・」とリカルド。

あぁ!!ご・ごめんね。そういう意味じゃなかったんだよぅ!!
慌てて、「そうだね。知ってるよ。君もブラーボだよ!」と頭を撫でるとリカルドは満足した様子。
子どもって本当にかわいい。





さて、今までは、他の子ども達がお遊戯をしている時間でも、参加しようとせず、隅っこで泣きじゃくっていた彼でしたが、今日は違いました。庭に出ることも嫌がり部屋の中で泣いてたのに、私が、一緒に行くかと誘うと頷くじゃないですか。

外に出たものの、みんなと走り合いっこするのは、彼の主義に合わないらしく、私と並んで腰掛けて日向ぼっこしてましたが。日向ぼっこにも飽きて来たので、「みんなのところに行ってみる?」と聞くと、頷くリカルド。

先生の、部屋に戻る時間よ〜という声が聞こえるまで、リカルドは私と心ゆくまで遊具で遊んだのでした。

私のイタリア滞在期間もあと残りわずかです。リカルドと過ごせるのも、今週でお終い。来週はまた、マンマが恋しくなっちゃうのかもしれないけれど、ハナコといたことで、少しお兄ちゃんになれたら、私としてはこれ以上の喜びはないんだけどな・・・。