さて、やっとこの日がやって来ました。9時30分のバスに間に合うように、先日より1本早い7時40分バーリ発の電車に乗り込みます。これだとアンドリア着が8時53分。ばっちりですね。電車はイタリアだと思えないほど時刻ピッタリに運行。再びアンドリアの町へとやって参りました。バスの切符は、駅舎の中の窓口で購入。お城に行きたい旨を伝えると、往復分の切符を売ってくれました。0.57エウロと書かれた切符が8枚。2枚が一組で往復で2人分の8枚。安!。タクシー往復分の出費を覚悟していたので、これはラッキーでした。でも、余分にバーリに泊まっているし、前回、午前中いっぱいをほぼ無駄に過ごしているので、得をしているのやらどうやら・・・。

しばらく待っていると、待ち焦がれたバスがやって来ました。正面に、『Castel del Monte』と書かれた看板も乗っています。やったね。バスは、町の中をぐるりと運行した後、郊外へと向かいます。私たちの他に乗客は、大きな買い物袋のおばあさんがひとり。若い女性ひとり。高校生くらいの男の子の2人組。以上。おばあさんは、町の中のバス停で降りて行きました。でもこのバス、『生活の足』だとはとうてい思えないのですけど・・・。

も・もしや、あれか?

お城の中心は中庭(?)です。もちろんこれも正八角形。工事中だったのが残念。
私たちが向かっているカステル・デル・モンテは、世界遺産です。イタリアの1セント硬貨のモチーフにもなっています。切手の柄にだってなっています。なのに、この便の悪さと、乗客の少なさはどういうことなんでしょうか?。バスは町を出た後、何も無い平らな道をひた走ります。道路の両側に見えるのは、どこまで行ってもオリーブ畑。18キロ先とはいえ、このどこにいったいお城があるというのだろう・・・。まだかな、まだかな・・・と、かなりワクワク感が高まってきた頃、も・もしや!!。見えた!見えた!。はるか前方ですが、お城のようなものが今、見えたような・・・。9時半にアンドリアの駅前を出発したバスは、10時10分頃、お城へ到着しました。

バスが停まったのは、小高い丘の下。ここで降りるように言われ、お城へはこの道を登っていきなさいと、山道を指差されました。道が細くて、バスは入れないのかな??。運転手に帰りのバスは、ここで待てばいいのかと尋ねます。彼の答えは、帰りは上まで行く、とのこと。不安なので、バスの誘導をしていた係員にも、同じことを確認します。彼も、上で待てと。

同じバスに乗っていたお姉さんは姿を消してしまったけれど、高校生2人組みが私たちの前を歩いています。彼らも、11時30分のバスに乗らないと帰れないから、彼らを見失いなわないように付いていれば、心配はないはず。舗装された山道を登ります。道沿いには、『狩猟禁止』の看板が。まぁ、確かに、狩猟が出来そうな森ではありますな。狩猟が趣味だったというフェデリーコ・セコンドに思いを馳せながら頂上を目指します。すると、後ろから一台の車が、私たちを追い越して停車したかと思うと、前を歩いていた、高校生2人組を乗せて走り去りました。え?。彼らに付いて行けば、確実に帰れると安心していたのにぃ!。ま、確かに、お城を観光するような風貌ではありませんでした。それにしても、町からバスに40分も乗ったこんな山の中で車に拾われて・・・。どんな待ち合わせやねん!。それともお城の従業員か?。見た目はまだ子どもだったんだけどな・・・。
半分、意地のようになってここまでやってきた訳でしたが、お城が目に入った瞬間、本当に来て良かったと思いました。周りに何もないところに、いきなりそびえ立つ、8角形のお城。平野が広がる地域なのですが、そこだけ小高い丘。そしてその頂上に不思議な形の建造物。路線バスでやって来たのは私たちだけでしたが、観光バスで訪れている西洋人の団体、遠足で来てる子どもたちがいました。ほっとしました、ちゃんとした観光地でした(笑)。さて、このフェデリーコ・セコンド。イタリアで生まれイタリアを愛した彼ですが、ドイツ人です。日本では恐らく、フリードリッヒ2世という呼び名の方が有名なはず。1194年に生まれた神聖ローマ帝国の皇帝です。このお城が建てられたのは、1229〜49年。概観も内部も正八角形をした、非常に変わった建築物です。真上から見ると、正八角形のプランの8つの角にそれぞれ、これまた正八角形の塔が付けられています。内部ももちろん八角形。かつては、色大理石で外壁が彩られていたようですが、それが無くても、充分、美しい建物です。

石造の建物らしく、中は外界と違い非常に涼しいです。内部は2階建てになっており、当然、1階にも2階にも8部屋ずつあります。外観も内装も、装飾は全て持ち去られているらしく、剥き出しの石壁を見ながら、当時の威容は想像するしかありませんが、天井のヴォールトと、部屋の隅の柱はとてもきれいでした。

建物もさながら、圧巻なのはここから見る風景です。どこまでも広がるなだらかなグリーンの絨毯。ところどころに見える濃い緑の部分は、オリーブ畑でしょうか。フェデリーコ・セコンドがドイツに帰りたがらず、ここに居続けた。という気持ちが分かります。私はドイツを訪れたことがありませんが、ドイツであれ、フランスであれ、イタリアの他の地域でも、この目の前に広がる風景よりも美しいところは、そうは無い気がします。

柱だって八角形。
お城の周りをぐるりと一周します。心地よい風。眺めは良いし、ほんとうにのどか。このままのんびり時間を過ごしていたかったのだけれど、帰りのバスは11時半だから、そろそろ向かった方がいいかも。名残惜しいですが、お城を後にします。おみやげ物を売っている屋台が並んでいるので、ポストカードを数枚購入し、ここでも再度確認です。帰りのバスはどこに停まるの?。売り子のおじさんもやはり、目の前のスペースを指差しました。よし、ここで待っていればいいんだな。

しかし、11時半が近づくにつれて、だんだん不安になって来ました。どうせ、バスに乗るのは私たちしかいないはず。バスがもし、山をあがって来なかったらどうしよう?。次のバスは何と言っても17時半なのですから!!。私たちがバスを降りたあの場所で待つべきだろうか・・・。20分になってもバスはやって来ません。この場所が始発だと思い込んでいた私たちは決心しました。最初の場所でバスを待とう、と。朝、アンドリアの駅を発った時は、バスは時刻より早く来て待っていたんです。さて、11時半になったのに、バスの姿が見えません。もう一度、よく時刻表を見ると・・・。あ、違った。
カステル・デル・モンテのひとつ前に、もうひとつ停留所(?)の名前が書いてありました。サンタ・マリア・デル・モンテ教会。どうやらここを11時30分発のようです。そういえば、朝もバスは私たちをおろした後、どこかへ向かって行ったな・・・。てっきり車庫に行ったんだと。

11時35分にバスの姿が見えました。運転手は朝と同じお兄さん。手を振って合図します。お兄さんはフロントガラス越しに、上に行って降りてくるからここで待ってないさいと、私たちに合図。ごめんなさいねぇ、朝もちゃんとそう言って教えてくれたのにねぇ。だって、すごく怖かったんだもの。もし、もし、もしもこのバスに乗れなかったら・・・。

カステル・デル・モンテが段々と小さくなっていきます。

朝と同じく、40分ほどでアンドリア駅に到着。駅前のバールFantasyで、パニーノを買って電車の中で食べることにします。私が選んだのは、2日前に食べたのと同じもの。とても美味しかったので再び購入です。サラミとチーズと生の黄パプリカのパニーノ。このパプリカが甘くて、ホントに美味しいんです。2度も食べることが出来て、ラッキーだったのかな?

2005.05