KARAOKE on Stage

Listen to the Music:槙原敬之

 

苦笑、であります。

良い声ですね、良い曲ですね、耳当たり良いサウンドですねー。・・・でも、それがどうしたの?こんなの、お前がいつもカラオケで唄ってる曲をそのままレコーディングしただけじゃん。好きな曲をコンピュータに入力してカラオケ作って自分で唄って、僕だってやってることなのに、わざわざ槙原敬之がやる必要あるんでしょうかねえ。てゆうか、やりたいと思ってもぐっとこらえてオリジナルでアルバム作るのがアーティスト魂ってもんでしょう(笑)。

これでもう少し音楽的に面白みがあったら価値がアップしたんですけど、↑上に書いた以上のことをやってないんですよね。サウンド的には"Such a Lovely Place"の延長だし、要するに凡作以下の駄作ってことになりますな。やっぱり、こういうアルバムを作ってほしくないし、作ってはいけないと思うんです。

カバーアルバムというと矢野顕子の"Super Folk Song"や"Piano Nightly"が有名ですが、彼女の場合は単に他人の曲を演奏するのではなくて、「自分の表現したいことと一致する曲=自分の曲」というスタンスで完全に自分の曲として表現していますので、もはやカバーの域を超えてます。おそらく矢野のそういう態度を見てカッコイイと思った槙原が「僕もカバーアルバム作りたーい」と思ってとりかかったのが、コレなんでしょう。それはこの選曲を見ればわかります。半分の曲が何らかの形で矢野顕子に関係があるわけで(笑)。

それでは、以下このアルバムのイケナイところを列挙していきましょう(←悪趣味)。

まず大貫妙子の「海と少年」のカバーですが、これは矢野顕子が「峠のわが家」でカバーしたものが元になっています。おそらく槙原もアッコちゃんのバージョンを最初に聴いたと思うので、そちらの影響が強く出ているわけですね。まあどっちにしても教授アレンジなので同じだとゆう話もありますが。で、普通矢野さんはこのアレンジは演奏しなくて、非常にジャジーなコード進行のバラードにすることが多いんです。僕はそうやってピアノで弾いて遊んでたんですけど"Super Folk Song"のライヴのときにアッコちゃんが全く同じアレンジで演奏したのを聴いて「よかった、僕は間違ってなかったんだ」って安堵しました。残念ながら槙原くんはライヴを観てないようです。

次に「おぼろづきよ」ですが、これも矢野さんが「ブロウチ」のライヴで素晴らしいアレンジでカバーした曲です。もともと名曲なんですけれど「文部省唱歌」はないと思いませんか。ちゃんと作詞者・作曲者を書くべきですよね。実は僕もこの曲の作者が誰なのかわからなくて、ずいぶん調べた経験があるのですが、偶然INTERNETで発見しました。作詞は高野辰之さん、作曲は岡野貞一さんです。

そして「春よ、来い」。もう、そのままユーミンです。まあこの曲をやりたい女心はわかるけどさー、ただでさえオネエな選曲の中にこの曲が入ることでとどめになったって感じですよねえ。

けなすばかりじゃアレなのでちょっと良かったってのを挙げておきます(笑)。それわ「ミス・ブランニューデイ」と「猿魔術」です。「ミス・ブランニューデイ」はその苦労を讃える意味で、よくがんばったで賞をあげたいと思います。節回しとか発音がほんのちょっと桑田風になっちゃってるところとかも、とっても微笑ましくてかわいいと思います。「猿魔術」はほとんどゴダイゴそのままなんですが、細かい上モノや合いの手がずいぶん凝っていてなかなか聴きごたえがありました。何よりもノリがよく出来上がってるのを評価したいと思います。

ということで、オリジナルな音楽を作っていくのって大変だしいろいろ辛いことも多いから、カバーに走りたくなる気持ちも理解できなくはないのですが、次はオリジナルにしてくださいねー>マキハラ。

 

1998.12.30

追記

やっぱりというか、槇原さんはこの後1999年に覚醒剤取締法違反で逮捕起訴されました。このアルバムの制作前後から使い始めたそうで、私の危惧していたことが現実になってしまったというところです。ありていに言ってしまえば才能枯渇の恐怖→焦燥→現実逃避、というお約束ロードをまっしぐらに突っ走っただけのことです。人間ってそんなに強くない生き物ですし、まあ仕方ないという気もしますが、クスリを勧めてくるような知人友人を持つこと自体がダメですね。

 

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