耽美は一日にして成らず

風と木の詩2:テクマ

 

待ってたの。このコーナーはこんなCDを待ってたの。そう、この人はお耽美を目指してるんだそうです。タイトルもすごいが、Special Thanksに挙げられてる人たちもすごい。ちょっと例をあげてみると
YMO, D.Bowie, Soft Ballet, The Yellow Monkey, TM Network, hide
美輪明宏、松岡英明、竹宮恵子、魔夜峰央、上領亘

ね、すっごい謎でしょー。YMOやBowieとイエモンがなぜ一緒に並ぶのか、この人の頭の中はあたしには理解不能です。しかし、このCDの内容は、さらに理解不能なのよ。

まず1曲目"Life on Earth?"はバラード。ピアノだけで始まるんだけど、このピアノの演奏がどう聴いても、リアルタイム弾きを32分音符でクオンタイズしたらリズムずれちゃいました、みたいなノリ。よろ、よろよろ・・・という感じで進んでいくピアノにこれまたフラフラしたボーカルが乗って、ボコーダーのコーラス(YMOの影響?)や強引な転調(TMの影響?)などが加わるかなり無茶苦茶な展開を経て、ここぞとばかりに「魂を売るのは御免さ!」と叫ぶ!(爆)。もうあたしゃ手ぇ叩いて笑っちまったよ。

さらに5曲目の「泣くのはおよしよJust a little girl」←いかにもお脳の軽い野郎って感じのタイトルですねも似たような路線で、再びよれよれなピアノが泣かせてくれます。この人、ピアノ弾けないみたいですけど、ピアノやバイオリンが弾けない人は自ら耽美を名乗っちゃいけないというのが耽美界の不文律ってのを知らないみたいです(笑)。ううーん、お前本当に「風木」読んでるか?一般市民がお耽美な世界に憧れるのもいいんですけどー、勘違い耽美は恥ずかしいわよっていう見本かしら。あとはもう、とにかく阿鼻叫喚な世界が繰り広げられます。

でも、これをマジでやってんのがすごいです。最初からフェイクでやってるのならけっこうシュールだと思いますが、どうやら本気なんですよね。ライヴの音源も納められてますが、これまた阿鼻叫喚の様相でして(YMOの"タイトゥン・アップ"がサンプリングされてたりしてる)、本人は至って真面目にやってるんですが、観客は爆笑してるわけよ(笑)。極め付きはこのアルバムの全曲解説を自らやってしまった「テクマのしゃべるおセンチ日記」!なにしろ、ここに至るまでハチャメチャな曲を聴かせられたあげく、さらにこの攻撃。あたしはもう爆死するかと思いました。ぜえぜえ。なにしろ"Life on Earth?"はかなり気に入ってる良い曲だ、とかマジで言ってんのよコイツってばっ!さらにすごいのが「強くなりたい男」の解説で、

デートの時にやらせてもらえなかった彼氏がAV借りて帰って、お家で見てたってことが理解できない、と相手の彼女に相談されたことがあったんだけど、男の子ってそうゆうものなんだよ。やりたいときはやらせろよ、ということを言いたかった。そういう気分で作ってみた曲です。

だそうです。
死ねこのバカ野郎!って感じ(笑)

人は(と、やや落ちつく)このCDをして音楽以前と言うかもしれない。でも、このめちゃくちゃさ加減って、ちょっと凄いと思うわけ。とにかくパワーだけはあるし。ってゆうか、パワーしかないんだけど。でもね、こうゆうとんでもないのを聴いてると、なんか元気が出てくるってゆうか、自信が出てくるってゆう感じみたいな。ワシってかなり音楽コンプレックスを抱いた人間なんですけど、こんな奴でもCD出しちゃってライヴまでやっちゃえるご時世なんだから、ワシの悩みなんて全然小さい小さい。このように開き直ることができました(笑)。

あと、反面教師としても大切ね。自分の好きなものと自分に表現できるものは違う場合があるという。でもさ、ちょっと恐いんですけど、このCDが「風と木の詩2」ってことは「1」もあったってこと?(背筋を走る戦慄)

 

1999.04.18

 

Back to "Strange Disks"