確かに本当の生ライヴ、なんだけどねぇ

IN CONCERT:Pat Metheny Group

 

実はコレ、PMGのライヴをそのまま録音したものをPatの意思とは関係なく(ついでに著作権も無視して?)、勝手にCD化したBootleg(海賊版)なのである。

PMGはその強力なライヴパフォーマンスで多くの熱狂的ファンを得てきたのだが、Pat Methenyという人は実に完璧主義者なので、公式に発表されたライヴ盤はCD2作+ビデオ2作だけである。なお"Secret Story"も入れるとビデオは3作になるが、これと"We Live Here Live in Japan"はどちらも日本国内のみの限定発売である(日本のファンは忠実で、Patの絡むものは全部購入するのため、レコード会社にとっては良い客なのである←単なるカモという説もあり←それわ言い過ぎ)。さらに、この少ないライヴ録音盤のいずれもがしっかりとマルチトラックで録音されており、スタジオでミックスされている。そのため、演奏内容は同じであっても、実際にコンサートホールで聴いたものとはかなり異なったサウンドになるのだ。

そこで、このブート盤の出番なのである。
ここに記録されている内容は、実際にホールで聴くサウンドとほとんど同じなのがミソである。

当然ながら音質も楽器の音量バランスも今一歩だし、観客の喋り声は入りっぱなしでリミックスもなされていない。どういう経緯で録音されたのかはわからないが、サウンドを聴く限りでは、単にコンサートホールの音をそのまま録音したのではなさそうである。PAにアウトする直前の2ミックス+会場内の音、という感じである。そのため、ここで聴かれるのは間違いなく、ライヴの時と同じコンサートホールのPAに出ているサウンドということになるのだ。つまり、コンサートホールのサウンドを体験することができるのである。

さて実際の演奏であるが、やはり圧倒的なパフォーマンスである。メンバー構成から想像すると「Letter from Home」発表直後のライヴであると思われるが(Pedro Aznarがいる)、この頃のPMGはブラジリアン・フレーバー溢れる明るいサウンドであり、このCDでもそれが満喫できる。しかしながら、近年の隙のない完璧なライヴパフォーマンスと比較すると、若干の荒さを覚えることも事実である。
圧巻は「MINUANO(68)」である。この曲は序奏部が省略されることが多いのだが、このCDではフルサイズで、9分19秒にわたって演奏される。荒削りながらオリジナルよりも勢いのあるサウンドになっており、実に素晴らしい。後半のマリンバ・アンサンブルの箇所では歓声が上がっていたり、一緒に手拍子をとっている人もいることもわかる。日本のオーディエンスは大人しくて、この箇所でもしーんと聴いているんだけど、もっとヒューヒュー叫んでもいいと思う。少なくとも僕は叫びたいぞ(笑)。また「THIRD WIND」もフルサイズの演奏なのだが、前半部のMethenyのソロはかなりのアウトぶりである。しかし展開はやや単調でワビサビに欠ける気がする。

というわけで、確かに本当のライヴ音源なのだが、Bootlegであるので、これ以上の論評は避けることにしよう。
なお、Pat Metheny本人は特にライヴのBootlegに対して「録音したものを個人的に聴いて楽しんだりすることまでやめろとは言わないが、商売として確信犯で売り出す連中は許しがたい」という立場をとっている。詳しくはPAT FREAKをご覧いただきたい。

1998年7月10日 

 

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