情念のクロスモジュレーション

David Sylvian Tour 2001 "Everything and Nothing"

 

音が良い!

シルヴィアンのライヴはこれが2度目。1度目は前回(Slow Fire)の来日公演で、この時は弾き語り+ちょこっと同期モノ、みたいな感じでした。JAPANもライヴでは聴いていないし、バンド形態での彼らの演奏を聴くのは正真正銘これが初めてでした。
それで、最初に思ったのが「音が良い!」なのです。中野サンプラザは割とデッドなホールで、PAを使う音楽用としては良い音響だと思うのですが、それにしてもクリアなサウンドなのでびっくり。じーっとステージを見ていたら、その秘密がわかりました。モニタースピーカーが無いんです。シルヴィアンを含めて全員がヘッドフォンでモニターしてました。これならモニターの音を拾ってサウンドが濁ることもないわけです。
演奏曲目は以下の通り。JAPAN〜最新作まで、教授とのコラボレーションも入ってたっぷり2時間でした。自分的にグッと来た部分をマーキングしておいたので、行けなかった人は地団駄踏んで悔しがってください(笑)。

The Scent of Magnolia
BlackWater
God man
I surrender
Jean The Birdman
Midnight Sun
Boy With The Gun - Orpheus ←ここから
Waterfront ←これを経由して
Tainaikaiki II ←ここへ来る流れとか。
Linoleum
Rooms of Sixteen Shimmers
Ghosts
Pollen Path
Cover Me With Flowers
Zero Landmine ←このつぎに
Forbidden Colours ←メドレーでこれが来ちゃう
Krishna Blue

Encore:
Nightporter

Encore2:
Bhajan

 

演奏内容について

演奏内容というか、アレンジについての感想が主体なのですが、いくつか列挙してみます。

・全体的に"Secrets of the Beehive"からあまり進歩が感じられない。
・ストイックなリズムを基本に、スパイスの効いたフィルを混ぜる(侘び寂び系)。
・シルヴィアンのグルーヴは予想以上にファンキー。
・同期orテープもあるけど無駄な音は一切入れない。
・スティーブのビートは予想以上に強力。
・マターリ系アンビエントに傾くかと思ったが、上記の要因によってアグレッシヴな展開が多い。
・シルヴィアン、相変わらずウタうますぎ。
・シルヴィアンの立ち方、JAPANの時から変わらず。←足腰に力が入ってない(笑)。

アルバム"Brilliant Trees"がよい例ですが、シルヴィアンはファンキーなノリが好きなんですよね。"Secrets of the Beehive"ではそういう感触が非常に希薄だったのですが、今回リズム的には驚くほどアグレッシヴだったと思います。ファンキーなリズムに乗って淡々と歌うシルヴィアン・・・かっこよすぎる。
あと、ブルース系コードが多かったのも特徴的。アレンジ的に"Dead Bees on a Cake"からの続きだと思うのですが、GhostsとかNightporter、Waterfrontのようなマイナー系バラードはことごとくブルース系のリズム&コードになっていました。といっても、シルヴィアンのやることなので非常に洗練されていますが。Ghostsのコード進行なんか「何を考えてこんな複雑なコードにしたんですか?」と小一時間問いつめたくなるような難しさでした。
あとどうでも良いことですが、歌のうまさは言うに及ばずです。前回の来日時もそのヴォーカルに驚いたのですが、今回はそれ以上でした。意識してるかどうかはわからないですが、「体内回帰」とかBoy with the Gunとか、デモーニッシュな曲での情念渦巻く表現が凄いんですよ。Zero Landmineとか戦メリとか、もう十分に聴きあきてるんですけど実際に目の前で唄われたらクラクラしました。自分がシルヴィアンのどこに惹かれるかというと、やっぱりそういう面ではないかと思います。そういえばJAPANのサウンドを「情念のクロスモジュレーション」なんて言ってたなあとか思い出したんですけど、今のシルヴィアンの方が凄味がありますね。

 

メンバー

Drums&Percussion:Steve Jansen
凄かったです。タイト&エロティック。ひたすら正確なのに、どこか色気があるんですよね。兄ちゃんが手放さないのも納得できる(笑)。多くの人が絶賛してますけど、この人もドラム叩かせたら無敵。もっと売れても良いと思うんですが、仕事しませんね〜。

Electric & Acoustic Bass :Keith Lowe
全体に控えめなプレイ。もともとクラシック系の人らしく、アコベを弓で弾く場面もあったりしました。

Guitar&Vocal :Timothy Young
アクのない土屋昌巳というか、もっとはっきり言うとDavid Tornのコピー系。

Keyboard: Matt Cooper
ひとりノリノリでソロを弾いていた人(笑)。かなりの部分がおまかせだったと思う。

Vocal&Guitar:David Sylvian
ボーカルはともかく、ギタープレイは相変わらず変態的。なんだそのコードは、みたいな不思議なボイシングが次々と登場します。

 

 

2001.12.9 

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