涙を流すわたくし

Imaginary Day Tour in Japan:Pat Metheny Group

 大好評のうちに"Imaginary Day Tour"の日本公演がきょう(ってゆうか、昨日ですね)終わりました。"We Live Here"のライヴは、その音楽の力にただただ圧倒されてしまったんですが、今回は少し余裕をもって楽しめたかなと思います。

 今回は東京での4公演をすべて聴いたんで(バカですね〜)、PMG漬けの一週間でした。でも全然飽きなかったし、聴けば聴くほど2時間半が短く思えました。

 実は初日の演奏を聴いて、はっきり言って新曲は下手だと感じたんで、「この程度ならちょっと頑張れば僕にもできそうじゃん。ふふふ、とうとう彼らの背中が見えてきたぞ」とか思ったんですよね。

 ハイ、もう全然甘かったです。

 たまたま初日はPatもLyleも調子が悪かっただけみたいで、他の日はもう、めちゃくちゃすごかったです。特に水曜(25日)はPatがキレまくってて(注)、"Are You Going with Me ?"のソロでも思いきり盛り上がってしまって、シーケンスはすっかり終わってるというのにひとりで延々「ギュイーンギュイーンギュイーン」を続けたり(←わかる人しかわからない表現)、やりたい放題。これで聴衆も完全にイッちゃいました。ものすごい拍手で次の曲が始められないんだよ。ちらりと見えた背中があっというまに空の彼方に消え去った瞬間でした。

 だいたい"Imaginary Day"をブッ通しでほぼ全曲やってしまうっつーのはかなり強引だし、その前後に定番曲を配置しただけの2時間半ですから、プログラムとしては単調です。ただ、それぞれの演奏がとても充実していて、ソロも毎回違っているので(日によって当たりハズレがあるのはご愛嬌)、いくら長くても飽きることはありませんでしたが。

 今回とても感激したのは、最後の方に演奏されたバラード2曲です。実はこのライヴのクライマックスは、なんとバラードだったんですよね。

 まずアコースティックギターのソロで「ミズーリの空高く」の"Message to a Friend"。Patの特徴である柔らかい音色とコードワークがたっぷり堪能できる佳曲。「ミズーリの空高く」はグラミーも取った名盤で、僕も去年いちばん聴いたCDはこれでした。その次がなんと「ウィチタ・フォールズ」の「9月15日」。これはLyleとのデュオで、二人の信頼関係がそのままサウンドになったような、呼吸がぴったりと合った実に素晴らしい演奏でした。をこの曲のLyleのソロは日本ファンへのサービスか、「さくらさくら」をモチーフにしたらしい部分もあって、それがまた実にLyleらしい解釈なのが嬉しかった。また、演奏としては特に最終日が見事で、Lyleのソロから消えるように曲が終わったときには会場中から感嘆のためいきが聞こえたほどでした。ほんとうにすばらしいです。

 最終日の帰り道でこの「9月15日」を反すうしながら「ああ、ほんのついさっきまであの二人の演奏を聴いてたんだなあ。僕が中学生の頃から、あんな風にふたりで音楽を作っていたんだなあ。」と思ったらポロポロ泣けちゃいました(←ただの変な人だけど、いいの。わかってるから)。

 とてもいい余韻が残ったライヴで、今夜はもう眠れそうにないです。

1998年3月21/22/25/26日:中野サンプラザ

 

注)この日、Patは大変疲れていたという。そのため、アコースティックギターでのミスタッチなどもずいぶん多かったのだが、それ以上に凄い魅力を見せつけてくれた。体調が万全な時はブレーキも効きやすいので、演奏もこぢんまりとしたものになる危険性がつきまとう。むしろ疲れていた方が、まわり(特に聴衆)のことが気にならず、逆に演奏に集中できるというのはよくある話。

初出:1998年3月 UC-Galop

 

Notice:UCに掲載したモノをほとんどそのまま転載したので、文体が他とは違ってますがご勘弁を。

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