自分に必要な時間

Acoustic Concert '99 / 大貫妙子

 

いま僕的にいちばん気になるアーティスト、それが大貫妙子なのでありました。アコースティックというと、"Pure Acoustic"の印象が強いわけで、今回も生弦とか入るのかと思ったら全然そんなことはありませんでした。曰く「全部人間が演奏してるから、これもアコースティック」という、とってもベーシックなバンドスタイル。ピアノ&ROHDES、シンセ、ギター、ドラム、ベース、パーカッションにボーカル by 大貫という編成。

曲目は「横顔」「色彩都市」「新しいシャツ」などのなつかしどころから最新作まで、バラエティに富んでおりました。フェビアン・レザ・パネのピアノは、CDで聴く以上に柔らかく繊細で暖かい。あんなに優しい音色でピアノを弾く人は初めて見ました。あと、Chris Parkerのドラムね。ずいぶん久しぶりに聴いたけど、相変わらずすてきっす。

それから、花束を渡すためだけに登場の坂本龍一。←大貫さんの紹介で初めてわかった人が多かったよう。僕はあのヘンな帽子を被った風貌ですぐ教授だとわかりました。急遽来日したらしく、"Tango"を弾いてもらおうと思ったけどリハーサルすらできなくて・・・と残念そうに大貫さんが語っておりました。さすがにラテン系で、花束を渡すやいなや、ガバッと彼女をハグした教授でありました(笑)。それにしても静かな、あまりにも静かなオーディエンスにびっくり。僕もけっこうラテン系なので、良い演奏があったらヒューヒュー叫びたいタイプなんですが、まわりがあまりにも静かなので大人しくしてました(笑)。

あと、僕はライヴ自体がけっこう久しぶりだったんだけど、終わった後の心地よい充実感と疲労感が良かった(僕はすごく集中して聴くので、ライヴの後はけっこう疲れるの)。途中で歌詞を忘れてやり直したり、後半ボロボロに音程を外したりと、内容的には今一歩のコンサートでしたが、とにかくサウンドが暖かで優しいのね。実は最近、いろいろ忙しくてゆっくり音楽を聴くヒマもないような状況で、心は荒むし、余計なことばかり考えてしまって、けっこうブルーな日々だったんすよ。そういったわだかまりがゆっくり溶けていくような感じでした。大好きな「突然の贈りもの」をフェビアン・レザ・パネのピアノで唄ってくれたんだけど、これがまた素晴らしい演奏で、ちょっと言葉では言い表せないほど感激しました。やっぱり僕に必要なのはこういう時間なんだよなあ、うん。

1998年3月13日:オーチャードホール

1999.03.13 

 

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