あこがれちゃいます

Paper Driver's Music / キリンジ

 

キリンジとは何ぞや?

久々に本年発売のアルバム評であります。さて、実は僕もキリンジのプロフィールを入手してなかったのでよくわからなかったんだけど、こうゆうときに役立つのがWebなのでした。さっそく検索すると、ありましたありました。なんと、アルバムのプロデューサーの友人の方のWeb Pageなどもあって、けっこうディープな情報が一気に集まってしまいました。キリンジとはもちろん堀込高樹くん(兄)と堀込泰行くん(弟)の二人のユニットでございます。メジャーデビューしたてのぴちぴちな男の子たちですな。Randy NewmanとかSteely Dan、Burt Bacharachなんかが好きだということで(←誰かさんの好みと良く似てますね:-))、兄ちゃんの方はけっこう打ち込み系らしいんですが、このアルバム自体は生演奏にこだわっていて、とても良質なポップアルバムに仕上がったと思います。サウンド的にも大変気持ち良く、プロデューサー冨田恵一のセンスも見事に開花した感じです。ところで、麒麟児と聞いて張り手を思い出したアナタはもう30歳過ぎてますね。安心して下さい、ボクと同じです(笑)。

 

兄弟の違い

兄弟といえども一緒に曲を作ることがなく、作詞作曲は個々にやっているのがこの二人のポイント。「オレの曲はオレのもの、お前のものはお前のもの」みたいな精神かもしれないけど、これはとても良いことだと思います。んでもって、単刀直入に書くと、弟の方が頭が良く、歌詞の語彙が豊かで、音楽的にも正統派ざます。兄の方がHぽくて好きって人も多いんでしょうが、中途半端に耽美な歌詞に力みやワザとらしさが見えかくれするのが僕は気に入らないなあ。耽美するには全然バックグラウンドが足りません。お勉強不足ですね。おそらく本人は「耽美」なんて言葉すら知らないと思うけど(この言われよう)、やっぱり素直にやるのが一番っすよ。そもそも健康的に育った男子だろうから仕方ないけど、そんな直接的な言葉遣いで気怠い雰囲気を出そうとしても無理なわけで。まあそんな背伸びも可愛いなあ、みたいに思えちゃうんだけど(笑)。でも、兄弟で音楽できるっていいよなあ。うらやましいというか、そんな関係にあこがれるっす。

 

秀逸なアレンジ

このアルバムはアレンジや、サウンド全体の雰囲気が非常にうまくできていて、1曲目の「双子座グラフィティ」のイントロから、もうむちゃくちゃカッコいいわけ。レコード屋で試聴して、かなり人はこの1曲目を聴いて購入を決心しちゃうんじゃないかと思うくらい素晴らしい。AメロなんかメロディはC#を中心にほとんど動かないんだけど、コード進行がお見事。A-Efm7-5-DM7-Aという進行でとっても胸キュンものなの。またベースラインの動きもいいんだよね。

他の曲も含めて全体的にキーボードがコードワークの主体になっていて、クラビとかエレピ、生ピなんだけれども、あまり印象的なプレイってのがない。バッキングに徹してる感じ。キリンジの二人はギターを弾いてるみたいですが、どうゆうわけか、かなりオフなミックスです(苦笑)。それと、弦以外の上モノがすべて生楽器ってのがすごいと思いました。つまり金管と木管なんですが、このアレンジもかなり秀逸であります。ともするとマンネリになる怖さがあるんだけど、ボーカルにしてもコーラスやダブリングで変化を付けていたりして、なかなか計算されております。

通して聴いた感想としては、ちょっとメロディが弱いかなと思うんですが(特に弟の曲のサビ)、耳当たりの良さは格別です。ひねくれてる兄がアレですが、弟よりもメロディがはっきりしているし、この兄がいないと何にも特徴のないポップスになってしまうような気もするので、とりあえずもう少しオトナになってね、というのが今のワシのメッセージであります。

あとこのアルバムはタイトルもいいよね。"Paper Driver's Music"・・・つまり僕のための音楽ってことっすか?(笑)

 

1998.11.14 

 

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