日本の未来は明るい(かも)

So Nice:小林 桂

 

さて、2000年初の「いいおさら」ですが、今年もよろしくお願いします。2000年記念に強力なヤツをやろうかと思ったんですが、21世紀は来年からだし、新ミレニアムも2001年からだと思うので、いつも通りにやっていきますね(笑)。

というわけで二十歳(!)のジャズシンガー、小林桂くんのアルバムを取り上げました。これがメジャーデビューのアルバムですが、肩の力を抜いて楽しめるアルバムになっていると思います。ただ、全体におしゃれで落ち着いた雰囲気というか、きっちりとまとめすぎているという気も。ワシとしてはもう少しはじける若さを全面に出した曲や、アグレッシヴなナンバーを取り入れて欲しかったですね。この全体を支配する落ち着いた空気というのが小林くんの持って生まれたカラーなのかな、とも思いますが。アレンジが大人しいのも原因で、心地よいサウンドは結構ですがもっと熱いものも欲しいわけ。でも二十歳でここまでできればいいかなと。何しろ昨今の若者はカラオケで歌えるJ-Popばかり聴いてJazzには興味を持たないし、30代以下でJazz/Fusion系のミュージシャンって塩谷哲以来ほとんど登場してこないし、なんともお寒い状況なんですよね。だからこういう男の子が出てきてくれれば多少は日本の未来にも希望を持てるかも知れないと思うわけです。

ところで、男性ジャズシンガーの成功する条件はハリー・コニックJr.を引き合いに出すまでもなく、ルックスが大切。この小林くんも、まあジャケ買いした女性が3万人は下らないと思われるほど格好いいというか、可愛いわけよ(笑)。ワシ的にはプロフィールのページに載ってる写真(レコーディング風景)はもっと格好いいと思いましたが。なんとゆうか、しっかりジャズシンガーの表情をしてるんですよね。

肝心の声のほうは、見事なオカマ・ヴォイス。これには明白な理由があって、まずキーが高いこと、それから発音が女性的なことが要因です。
まずキーの高さですが、ジャケットを見なかったら女性シンガーかと思うほど高いっす。ご存じない方のために申し添えておきますが、女性ジャズシンガーは非常にキーが低いのね。綾戸千絵とか、カサンドラ・ウイルソンとかさ、すごく低くてソウルフルでブルージーなボーカルなんですけど、小林くんはそういう女性シンガーよりもキーが高いです。
英語の発音については、やはりジャズシンガーだった母親の歌を聴いて育ったためだと思うのですが、妙に女性的です。あの格好いい男の子がこの発音で唄ってる図というのは、けっこうアンバランスかも。さらにちょっとハスキーな声質なので、すごく繊細な感じ。そう、全体に繊細な唄い方なんだよね。だから余計に男性っぽさを感じさせないし、ファンダメンタルな部分が高い位置にあるので、ボーカルラインがサラッと流れていく飄々とした軽さを感じます。おそらくこの軽さが物足りないという人は多いと思いますが、黒人シンガー系のドスの効いたブルージーでコテコテなボーカルを苦手とするワシにとっては非常に心地よかったりするのでした。綾戸とかを好む人には尻の青いガキにしか思えない声かもしれませんが、この年齢にしてこのソフィストケイトぶりも貴重でしょう。

おすすめのトラックはエリントンの"Don't get around much anymore"と"In a merrow tone"、ハイトーンな部分が素敵な"How high the moon"あたり。「ジャズはちょっと・・・」という人でもこのアルバムならまず大丈夫だと思うので、お試しください。

 

2000.01.23

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