処女みたいな。

Like a Virgin:Madonna

 

Madonnaのセカンドアルバム。これで彼女が全世界的に有名になるキッカケとなった。実はアメリカではデビュー作が爆発的に売れてすぎて、おかげで本作の発売を延期するハメになったといういわくつきでもある。

歴史的背景

当時はMTVが始まったばかりで、音楽ビデオというプロモーション法そのものが新しく、パワーもあった。そこへ絶妙なタイミングで乗り込んできたのがNile Rodgers Productionであり、タイトル曲"Like a Virgin"である。同様にして、Duran DuranなどはただのイギリスのアイドルバンドだったのにMTVのおかげで一躍世界的なスターダムにのし上がってしまったし、Wham!やA-haなんかもそういう経緯でスターになっていったのだ。テレビと映像の力は偉大である。

で、僕なので当然サウンド的なことを掘り下げて書きたいのだけれど、改めて聞き返してみてもこのアルバムってサウンド的には掘り下げるほどの内容がほとんどないのだ、今となっては(苦笑)。で、一言でまとめると以下のようになる。

80年代にリリースされた一連の「Chick再結成アルバム」の中でもっともポップなもの。

80年代にはNile Rodgersプロデュースで、元Chickのメンバー(Nile, Tony Thompson, Bernard Edwards)がよってたかって集まって、いろんなアーティストのアルバムを手がけていたのであるが、おそろしいことにどれもこれも大ヒットであった。思い出せるものを上げてみる。

 ・Let's Dance / David Bowie
 ・The Power Station / Power Station
 ・Notorius / Duran Duran
 ・Like a Virgin / Madonna

ちなみに、本作"Like a virgin"はアルバムの構成や曲調がDavid Bowieの"Let's Dance"に酷似している。アップテンポにはじける"Modern Love"で始まって、ちょっと色っぽい"China Girl"を挟み、タイトル曲"Let's Dance"が来る、という展開は全く同じである。また、「商業的に成功させる」というコンセプトも似ている。小室哲哉ではないが、量産型プロデュースという気がしないでもない(ちなみに小室はこの頃のNile Rodgers ProductionやZTTがそれぞれアメリカやイギリスで展開した音楽マーケティング法を90年代の日本で展開しただけであり、その方法論自体にオリジナリティはない)。

サウンド概要

後の"The Power Station"ほどコテコテではないが、80年代初期のPower Stationサウンドであることに変わりはない。レコーディング・エンジニアは90年代に入っても超売れっ子なJason Corsaroである。全体としては非常にシンプルな音作りで、Tony Thompsonの強力ドラム&Bernard Edwardsのベースを柱にして、キャピキャピしたMadonnaのボーカルを乗せました、という感じ。Nile Rogers自身のギターも控えめで、とにかくポップなメロディを生かすアレンジになっている。シンクラヴィアの使い方にしても、この直後のDuran2のシングル"The Refrex"でのサンプリング大爆発が信じられないほど、とっても地味である(笑)。

Material Girl
仕掛けらしい仕掛けも、展開らしい展開もなくひたすら唄い続けるMadonnaをバックアップするカラオケ、というかんじである。そんなわけで、アレンジ的には何にも考えられていない。オケはとてもシンプルで、ときどき入るベルとコーラスが唯一のアクセントとなっている。これがどうして音楽として成立するかというと、ポップなメロディとむちゃくちゃ強力なドラム&ベースが曲をぐいぐい引っ張ってくれるからである。ということで、David Bowieの"Modern Love"と同様に、Tony Thompsonがいなかったら成立しなかった曲といえよう(笑)。シンセベースもフィルターの開いたかなり下品な音色なのだが、ワイルド感を盛り上げるのに一役買っている。クレジットを見るとBernard Edwardsがベースを担当したようであるが、このアルバムはシンセベースが多く、時代を感じさせる。しかし、4分そこそこで切り上げるのは潔く、とってもカッコよい出だしである。
Angel
どこまでもポップな1曲目とは対照的に、ちょっと陰影のあるメロディである。音域も低めになっているあたりに、Nileの計算が見える。この頃のMadonnaの声はキンキンした高域と、ちょっと色っぽい中低域のギャップも魅力だったので、それを全面に出したわけである。2コーラス以降、右チャンネルにNile自身によるギターが入ってくるのだが、さすがのプレイである。
Like a virgin
鮮烈なタイトルとプロモーションVTRで世界的ヒットとなった。が、これもサウンド的には特筆することは何もない。ドラムとシンベとシンセとギターのカッティング+白玉のオケにボーカルが乗っただけである。べったりとしたシンセベースが延々鳴っていてそのままだとリズムの歯切れが悪くなるので、その他の楽器はカッティング中心のアレンジになっているようである。しかし、Tony Thompsonのドラムは凄い。まさしく「ドンガラバシャーン!」というフィルインで、めちゃめちゃ強引なノリではある。
Love don't tell here anymore
狙いは非常に良いと思うのだが、このときのMadonnaの実力では少々及ばなかったようだ。残念である。
Dress you up
Nileのギターが最もよく聴ける曲。ギター・ソロまで入っているのだ。この人はこのギターだけでミリオン・セラーを生んできたといっても過言ではない。大したものである(笑)。この曲もメロディはとっても良い曲だと思うのだが、あまりにもアレンジが単調でもうちょっとなんとかならなかったのかなと思う。

1998.09.05

 

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