これはクラシック?

Kapustin Plays Kapustin:Nikolai Kapustin

 

さて久々の「いいおさら」は、今世紀最初にふさわしいすごいCDでございます。
ニコライ・カプースチンという名を聞いてわかるあなたは相当なピアノ通、もしくはジャズ通ですね。早い話が、ロシアのおっさんがソ連時代の弾圧もなんのその、自分のやりたいジャズを作ってピアノで弾きました、というCDです。まあそれだけなら単に珍しい人ってことで終わっちゃう話なんですけど、この人のどこがすごいかというと、ジャンルがクラシック扱いなんですね。なにしろどの曲も完璧な自筆譜があって、その通りに演奏されているのであります。もちろんインプロビゼーション皆無で。すなわちジャズの語法で作曲されていながらも内容は純粋な再現芸術。ゆえにクラシック扱いというわけ。でもこれは誰がどう聴いても立派なジャズです。さらに凄いのは、演奏が異様にハイレベルなんです。一曲目はこんな感じで、テヌート&スタカートが付いてる音符はスウィングだろうなとか、アクセントが裏々で食い込んでくるのがビバップなんだなとか、クラシックの記譜法を駆使してジャズ的ニュアンスを表現しちゃってるんですねー。それにしても、もう見ただけで嫌になるほど難しそうでしょ?実際めちゃくちゃ難しいのよ、これが。

Volume.1

カプースチンの自作自演集はとりあえず2枚出ていて、第一集は「8つの演奏会用練習曲」「幻想ソナタ」「変奏曲」など。まずエチュード(練習曲)から思いっきり飛ばしまくりです。めちゃくちゃな難曲揃いの上に、コードワークもフレーズも完全にジャズですので、一般のピアニストが演奏するのはかなり困難。実はカプスーチンさんはロシアの伝統教育を受けたピアノの名手らしく、超絶技巧系の曲もバキバキ弾いちゃいます。この痛快さはもう、笑うしかありません。幻想ソナタはフレージングが確かに幻想的で、ほとんど即興っぽく思えるのですが、これも楽譜があるんですねー。最後の変奏曲は、普通に聴いたら全編インプロのソロだと思うんですが・・・これを楽譜で弾くっていったいどうゆう神経なんだろう。

Volume.2

第二集は「24の前奏曲」といくつかの小曲。前奏曲はショパンやドビュッシー、ラフマニノフがやったのと同じ手法で、ハ長調−イ短調から始まって五度遷移ですべての調をまわって最後はニ短調で終わるというもの。これが凄い。24曲のバリエーションが豊かで似たような曲がない。でも、全体としては統一がとれているというもの。前衛的なものもあればメロディアスなものもあったり、リズム面でもいろいろな変化があってカプースチンの無限の才能を見せつけられる感じです。

というわけで、今年初の「いいおさら」はおしまい。

2001.01.28

 

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