みなさんこんにちは。 アルバイト兼記者見習いの華です。 いろいろあってまだ正社員になれません。 報道局事務所が東京千代田区に移転してからさっそく編集長(イギリス紳士)は行方不明になってしまいました。 どうやらまた海外に逃亡してしまったようなのです。 そして今日、編集長は帰ってきました。 真っ黒に日焼けして。 ***** 華: 「編集長、まったくもう、どこへ行ってたんですか!ひと月も仕事ほったらかしにして!」 デスクに座る編集長の顔は黒かった。 焼け焦げたトースト並みに黒い。 街でこの顔を見かけたら「どこの国の人だろう」と思うだろうし、暗闇で現れても気付かないかもしれない。 編集長: 「この世知辛い世の中ですさんでしまった僕の心を洗濯しに、ね・・・。ちょっとスリランカまで」 華: 「引越しで使った雑巾を先に洗濯してください」 編集長: 「僕の心は雑巾以下かい。カレーもおいしかったし、誰もいないビーチも最高だったぞ」 華: 「あたしも行きたいです」 編集長: 「キミはダメだ。あそこは敬虔な仏教国でロクなお酒はないからな。アルコールを手放せないキミには辛いぞ」 華: 「あたしはアル中じゃありません!少しお酒飲まなかったらイライラしたり手が震えたりするだけです!」 編集長: 「それはキミ、パーフェクトだよ・・・」 そういえばかつて同じ会話をしたような気もする。 編集長: 「ところで、だ。旅の途中ずっと考えていたんだが、この新事務所への移転を機に何か新しいプロジェクトを始めたいと思うのだ。いや、別にニュースを伝えることはこれまでどおり重要な仕事なのだが、それに加えてもっと軽いアクセントをつけてみたい」 華: 「と、いいますと?」 編集長: 「例えば、だ。我々の名前にニックネームとかミドルネームをつけてみるというのはどうだろう?ちょっとした変化でも周囲にはまったくの別物に見えることもある」 華: 「はあ、そういうものですか」 編集長: 「新たにここに入社してくる人たちのためのニックネームもすでに考えてある。マカロニ、テキサス、ジーパン、ステテコ・・・」 華: 「そうそう、あたしがマミーで、ってここは七曲署か?太陽に向かってほえるのか?それに最後のステテコはいないし」 編集長: 「・・・。それならミドルネームでもいいぞ。僕なら、そうだな、『イギリス"スリランカ野郎”紳士』とか」 華: 「どこの人だか分かりません!」 編集長: 「ちゃんとキミのリングネームも一週間くらいかけて考えてある」 華: 「リングネームって・・・。あたしは四角いマットのジャングルで戦ったりしません!(困惑)」 編集長: 「そして児童施設に寄付しろ!」 華: 「蛇の穴とも戦ったりしません!(困惑)」 編集長: 「キミは今日から『フラワー華』だ」 華: 「まんまじゃねーか少しはひねれやスカタン」 編集長: 「じゃあ、『華フラワー店』」 華: 「お花屋さんでもないです。てか今の会話で『店』つけるのおかしいです」 編集長: 「じゃあ『ハナ肇』」 華: 「かくし芸大会で銅像になったりもしません!」 編集長:「わがままだなあ」 華: 「これまで通りでいいです。ところで今日のニュース、こんなのどうでしょう」
編集長: 「今年の夏なんて週間予報ぜんぜんあたらなかったしな〜」 華: 「天気予報というのはこれまで『明日傘どうしようかなー』といった程度の疑問に対応するものでしかありませんでしたが、これからは違うんです。的中率が高くなった天気予報はそのまま農業関連の株の騰落に作用し、次いで農作物の国際貿易、農業ビジネスに大きな影響を与えるのです。例えば今回の冷夏があらかじめ確実にわかってたとしたら編集長はどうしますか?」 編集長: 「う〜ん、半ソデ半ズボンはしまっておくかなぁ」 華: 「話聞いてんのか?」 編集長: 「・・・。」 華: 「いいですか?一年も前から来年の冷夏がわかってたら、例えば良質のコメを買い占めておくとか、あるいは野菜の輸入ルートを作っておくとか、あるいは作付けする品種を換えておくとかできるわけです。国の政策としては天気予報を確実にするための投資は必要なことだということです。」 編集長: 「たまにキミの話は難しいのだが、それってつまり天気予報が必ず当たれば儲かるということかね」 華: 「話を短くしすぎのような気もしますが、そんなところです」 編集長: 「スリランカは一日に一回夕立のようなスコールがあって、それ以外の時間はかなり日差しが強い。」 華: 「それが何か?」 編集長: 「それは私の言葉だよ。そんなスリランカの天気は当てるのは簡単なのだが、どうやって儲けるのかね?」 華: 「とりあえず私をスリランカに連れて行ってみてください」 編集長: 「それはダメだ、だってスリランカは敬虔な仏教国でロクなお酒はないからな。片時もアルコールを手放せないキミには辛いぞ」 華: 「わたしはアル中じゃありません!少し飲まなかったら・・・」 編集長: 「それはキミ、パーフェクトだよ」 華: 「・・・。」 ・・・フェードアウト |