世の中は世知辛いニュースばっかりです。 でも私は時給50円でおバカな編集長の下でアルバイトしています。 え?これが一番世知辛いことなの? あの編集長の下で働くなんて狂気の沙汰?! ・・・認めます。 ***** 華: 「編集長、ニュースです!」 いきおいよく編集長室の部屋をあけると、編集長(イギリス紳士)は半裸になってフラダンスを踊っていた。 乳首にはバンソウコウが貼ってある。 デスクの上の水槽には、このあいだ釣ってきたというニジマスが泳いでいた。 華: 「・・・。」 編集長: 「・・・。コホン、えっとね、華ちゃん。説明してもいいかな・・・?」 華: 「したいというのであればどうぞ。別になくても構いませんが」 編集長: 「今度の新入社員歓迎会での演じモノを練習していたんだ」 華: 「新入社員歓迎会?」 誰がこんな会社に入ってくるのだろうか。 私の知る限り、この会社にはバカな編集長とアルバイトのあたししかいないはず。 編集長: 「キミだよ、華ちゃん。キミの目覚ましい活躍は正社員としても立派にやっていけると経営企画会議で評価されてね」 華: 「はあ。私が正社員ですか・・・。そこはかとなくうれしいような気もしますが。」 経営企画会議の参加者とは一体誰なのだろう。 編集長: 「私の右腕であるスーパー部長も、やっと認めてくれた」 華: 「(あの、ほんとの右腕か・・・)」 編集長: 「だからな、新入社員歓迎会のためにニジマスのレインボー君をキミに見立ててフラダンスの練習をしていたというワケさ」 白い歯をキラリと輝かせて編集長は続けた。 編集長: 「本番のときには、24時間耐久フラダンスを見てもらいたい」 華: 「・・・。あたし1人で、ですか?」 日本社会における性的嫌がらせの認知度が高まったのはここ数年の話だ。 性的嫌がらせに対する考えが進むアメリカでは、デスクの上の水着写真だけでも厳罰の対象となる。 しかしこの編集長の仕打ちはもはや性的嫌がらせのレベルではない。 生物的嫌がらせとでも言えばいいか。 編集長: 「そして、正社員になったときには給与体系も少し変わる。」 華: 「と、おっしゃいますと?」 編集長: 「時給40円だ」 華: 「下がってるじゃねーか、しかも今までの給料未払いのままかよ」 一時間働いてガリガリ君すら買えない。 編集長はちょっとびびってもらしちゃったようだ。私の顔色を見た編集長は、 編集長: 「大丈夫だ。オムツをはいている」 白い歯をキラリと輝かせて、変質者、もとい編集長は言った。 華: 「・・・。ところで、今日のニュースはコレでどうでしょう?」
編集長: 「ところで華くん。キミはバスケットボールはするのかね?」 華: 「ええ、中学のときはちょっとバスケしてたのですが、ヒザを悪くしたことがありまして。本当はバスケもしたいんですけどね。ヒザに爆弾抱えながらバスケはできません」 編集長は部屋の隅まで走っていき、頭を抱えた。 華: 「ヒザに爆弾、っていってもそれはいつヒザ関節が故障するかわからない、という意味であって、編集長が考えるようにヒザに手榴弾とか埋め込まれてるわけではないので爆発したりとかしません。ていうか日本語わかれ」 編集長: 「それならそうと早く言ってくれよ。びびったびびった」 華: 「・・・。」 編集長: 「華くん。キミは大変に有能なジャーナリストだと思う。仕事もよくできる。でも一つだけいいかな。最近ちょっと怖い」 テメーのせいだよ。 |