僕の経営する第3報道局には現在、大学一年生の19歳の女の子がアルバイトとして働いている。 名前は華。 鼻ではない。 それではゾウだ。 日焼けした肌がまぶしい、闊達とした女子大生だ。 今回は、彼女のつけている業務日誌を見てみよう。 ***** 今日から業務日誌をつけるように言われました。がんばります。 あこがれのイギリス紳士さんの下でアルバイトができてとてもうれしいです。 時給50円でも文句は言いません。 なぜこの会社に入ったかというと、『情報の氾濫と呼ばれるこの時代に本質的かつ有用なニュースを配信していきたい』という趣旨に深く賛同したからです。 それでは今日の業務内容を簡単にまとめていきます。 ***** 華: 「編集長!ニュースです!!」 編集長(イギリス紳士)は、デスクでブリーフ一枚になって乳首にバンソウコウを貼っていた。 華: 「・・・。」 編集長: 「なにかね?いや、スマンね、今日ちょっと人間ドックに健康診断だから最低限の身だしなみをしようと思ってね」 太陽の光をバックに白い歯をキラリとさせる編集長は、なぜかとてもさわやかにそう言った。 だから乳首にバンソウコウですか? むしろ医者に殺意を抱かせるのではないか、と思ったが私は黙っていることにした。 というより私自身に殺意が生まれていた。 編集長: 「キミも確か今日、社会保険に入るための健康診断だったよな、バンソウコウ要る?」 要りません。 華: 「・・・。」 編集長: 「で、用件は何かね?」 華: 「今日の配信ニュース、こんなのはどうでしょう?ほんとはオマル師がカンダハルから撤退したことをトップ記事にしてもよかったんですが」 編集長: 「オマル師・・・?」 華: 「アヒル型小児用便器ではないですから。ましてそれを製造している人でもありません」 編集長: 「え?違うの?」 華: 「断固として違います。」 編集長: 「なあ〜んだ、てっきりアヒル型オマル作りの権威がカンダハルからいなくなっただけなのかと思ってた。でもさあ、100万個のアヒル型オマルがぞろぞろ歩いてたら壮観だよね(笑)。あ、逆に恐怖かなあ」 あなたの知能レベルはミジンコサイズですか? 華: 「・・・まあこの記事をよんでください」
華: 「携帯電話という非常に便利なものが発達する一方で、ソフトウェアの発達、インターネットのブロードバンド化はこういったマイナスの面も生んでいます。現在までちゃんとした法整備がなされていないために、必ずしもメリットだけで携帯電話を使えるということはありません。まさにこれは科学の発展に必然的に追従するマイナス面なのでは?」 編集長: 「ふむ。」 華: 「時代は常に科学の発展を伴うのですが、常にメリットばかりではない、という点に着目すべきです」 編集長: 「シャンプーはメリットだろう」 それじゃねえ。 華: 「・・・。いえ、携帯電話のメールの話です。迷惑メールがたくさん入ってくることに対する法的整備の件です」 編集長: 「ああ、スマンドリル、スマンドリル」 華: 「黙れ」 編集長: 「私のところにもよく携帯にメールが入ってくるからなあ」 華: 「そうなんですか?私のところにもよく変なメール来るんですよ。もうわけわかんないんですけどね」 編集長: 「どんなの?」 華: 「『驚愕!インド人のオデコについてるのはホクロではなかった!!』とか『絶叫の恐怖映画!あの男が帰ってきた〜羊たちの沈黙に続く第2弾・戦いの中で戦いを忘れた男ランバラル』」 編集長: 「スマン、それは私だ。」 華: 「・・・。」 編集長: 「私のところにくる変な迷惑メールっていうのもっとすごいぞ、『僕とエッチしよう』とか『今どんな格好?』とか『パンツの色教えて』とかそういうのなんだ。」 華: 「うわ、イヤですねえ」 編集長: 「出会い系サイトに17歳女子高生の名前で『エッチなメールください』って登録したからかな?」 間違いありません。 華: 「・・・。まあそれは多分法整備がされても入ってくると思いますが。自分で登録したのなら。このバカタレがッ!!」 編集長: 「・・・。そう怒るなよ。なんだか最近お局さまに似てきたぞ、そのツッコミ」 華: 「失礼しました。じゃあ今日のトップ記事はその携帯電話の法的整備の不備ということで。ところで編集長が担当していた映画ニュースについてはできましたか?」 編集長: 「おお、できたぞ。私はあんまり映画とか見ないから苦労したがな。特集はコレだ。」
耳から脳ミソが垂れ流しになってるのですか? 華: 「・・・編集長、まだこの映画観てませんね?」 編集長: 「なぜわかった?」 華: 「いえ、ただなんとなく・・・」 編集長はとてもさわやかな笑顔で、書き直すよ、といって記事をたたんだ。 私は、タイトルから間違えてるよ、という言葉をなんとか飲み込むことができた。 華: 「それから、ひとついいですか?」 編集長: 「なにかね?言ってごらん?」 華: 「とりあえず、服着てください」 編集長はイギリス紳士と名前の書かれたブリーフ一枚だった。 私はその日、一日ものすごくブルーだった。 |