新会社設立?!






その日僕は一人デスクに向かい、書類の作成にかかりきりになっていた。

僕が株式会社アミーゴを一身上の理由で辞職してから早数ヶ月がたっていた。

そろそろ僕のロングバケーションも終わりでもいいかな。

そんな風に考えるようになったのだ。

そこで一緒に会社を辞めた葵ちゃん、強敵(とも)であるワラビさんと一緒に試験的に会社を立ち上げようということになったのだ。

今、僕はその設立準備に追われている。

ここはその新会社のオフィスになるべきところだ。

まだ机とイスや箱に入ったままの電話、パソコンが乱雑に並べられているだけで、電話回線の契約すらしていない。

!!

なぜだろうか、その時僕は全身が総毛立つのを感じた。

誰もいないはずのオフィスなのだが、僕の直感は何かイヤな存在を感じていた。

プルルル、プルルル、プルルル・・・

電話が入ったダンボール箱の中からだった。

もちろん電話回線はつながっていない。

電話線もコンセントもつながってない電話が鳴っている?!

・・・プルルル、プルルル、プルルル

おそるおそる箱を開けてみると、ディスプレイには『呉エイジ』と映し出されていた。

霊能力?

あんたはイタコか?

イギリス「もしもし?」

た〜こで〜す(故・たこ八郎風)」

イギリス「・・・。」

ガチャ。

僕は何もなかったかのように電話を箱に収め、ガムテープでしっかりと封をし、そしてまたデスクに戻った。

窓の外では夏の強い日差しが木々の緑を照らしている。

そよ風が気持ちいい夏の日だ。

まさかそんなことはあるまい。

僕がペンをとって書類に目を戻したとき、再び電話が鳴った。

いや正確にはそれは電話ではなかった。

鳴っているのは僕がおやつに持ってきたデスクの上のバナナだった。

イギリス「・・・もしもし?」

呉「そんなバナナ!?って思ってるだろう

グチャ。

まさかそんなことはあるまい。

今日は暑い。

気温は摂氏40度近くあるのではないだろうか。

こんな暑い日には幻を見ることだってあろう。

僕が目覚ましでも、と缶コーヒーに手を延ばしたときだった。

プルルル、プルルル、プルルル・・・

今度鳴ったのはランチに用意してきたSUB WAYのホットドッグだった。

ネチョ。

ケチャップが耳についたが、どうせこれは夢に違いない。

イギリス「・・・もしもし?」

「SUB WAYのホットドッグが好きなのかね?」

イギリス「・・・。」

僕は一体どういう技を使ったのか知りたかったが、逆に知るのが怖かったので訊くのは止めることにした。

呉師匠ならやりかねないと思ったからだ。

イギリス「お久しぶりです、社長」

「うむ。おひさおひさの久本雅美だ

脳ミソの代わりに天津甘栗でも入ってるのですか?

イギリス「あれからもう数ヶ月もたつんですねえ。早いものです」

「今は何をしてるんだ?」

イギリス「結局、前の仕事続けたい自分に気がついて、ワラビ長官と葵ちゃん誘って新会社を試験的に立ち上げることにしたんです」

「じゃあ我が社の敵になるわけだな?」

イギリス「とはいっても規模が全然違いますから」

「新会社の名前はもう決まったのか?」

イギリス「いえ、まだですが。」

よし、じゃあプリザSに決定。

って痔の薬?

イギリス「プリザSはちょっと・・・」

「文句の多いヤツだな。じゃあボラギノール

イギリス「それもちょっと・・・」

「すまん、3人だったな。複数形でボラギノールズ

問題はそこじゃねえんだ。

イギリス「いえ、3人で決めたいと思いますので・・・。お気持ちだけ受け取っておきます」

「そうだったな、いやしかしこれからも業界のためにはがんばってくれよ」

イギリス「ハイ」

「といったところで一つモノマネを聞いてくれるか?新作でね、人という字はァ〜(金八先生風)、・・・」

グチャ。

外では夏を謳歌する虫が鳴いている。

強い日差しが照りつける日本の夏はまだこれから始まるところだ。

僕は何もなかったかのように再び書類に目を向けた。

しかし頬に伝わるケチャップの気配は現実のものに違いなかった。

するとそこに準備を手伝いにきた葵ちゃんがやってきた。

「お久しぶりデス〜。支社長〜。・・・ケチャップついてますよ?」

イギリス「いや、これはいいんだ。気にしないでくれ。ところで新会社の名前を考えてたんだけどね・・・」

「ハイ?」

イギリスちょっと和風でヒサヤ大黒ブラザーズってどう?






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