ナイトビジネスグループメンバー紹介(後編)




【友情出演「kodera's inside of head」の小寺くん】


*****

呉社長との電話を切ったのち、僕はあるところに電話をかけた。

今日は電波が通じていることを願う。

プルルルル、プルルルル、プルルルル・・・。

小寺「はい、小寺です」

イギリス「いま、どこにいるんだ?」

電話の向こうにいるのは、株式会社アミーゴの一番新しい新入社員の小寺くんであった。つい最近、やっと業績1万に達しためでたいヤツである。

小寺「え? ひ、姫路ですが」

イギリス「それはウソだろう? なぜなら、小寺くんの携帯に電波届いてるのがおかしい。そしてもし姫路の実家にいるのならなぜHPが更新されていないのだ? そして最後にもうひとつ、その電話の周りで聞こえる雑踏の音はなんだ?」

小寺「あ、あううう・・・」

イギリス「キミはいま、新宿の歌舞伎町にいるね?」

小寺「はうッ・・・」

イギリス「実を言うと、だ。いまキミがいる店は、僕のところが経営するナイトビジネスグループのひとつなんだ。

いや、さっきね、そこのお店のナンバーワンキャバクラクィーンの葵ちゃんから電話があってね、『上半身ハダカのマダガスカル人みたいな人があたしのカラダ触るんですぅ〜〜』って助けを求めてきたんだ。

僕が知る限り、そんな日本人離れした日本人はキミ(はぅぅぅぅ・・・)とキミの兄貴(ぼ、ぼぼぼボクは、し、しあわせなんだな〜)くらいだ。で、電話をかけてみたというわけさ」

小寺「なんでまた、こんなキャバクラを・・・?」

イギリス「呉社長じきじきの命令だ。夜の世界を征服しろ、とね。」

小寺「す、すごい・・・」

イギリス「でも、キミはこういうところに来る前に、コンテンツを増やし、絶対零度の寒さをなんとかしたまえ。自宅のPCでインターネットをしているのに見てて寒さを体感できるのはキミのところくらいだ。

まあ、そんなことはどうでもよいのだ。ウチの女のコに下手に手をだしたら、若いモンをそっちに回すからな。たとえそれが小寺くんでも」

少々脅しすぎたかもしれない。

小寺くんは電話の向こうで嗚咽をあげて泣いていた。

*****

新宿歌舞伎町にあるイメージキャバクラ『葵病院恋愛科』。ナースのコスチュームに身を包んだ女のコがお酒を注いでくれて、おしゃべりしてくれる、そういうクラブ。

葵ちゃんはそこで一番人気のある女のコだった。

「あ、支社長」

イギリス「今日も繁盛してるみたいだね。これもすべて葵ちゃんがカワイイからかな」

「あの・・・、このあいだはすみませんでした」

イギリス「構わんよ。気にするな。多少仕事がしにくくなったり、歩くのがしんどくなったりするだけだし・・・。ところで、話は変わるんだが、このあいだ、姫路の本社に呉社長に面接しに行ってきたんだろう? どうだった?」

「あ、先週行ってきましたよ、姫路本社。そのときのことですか・・・?」

葵ちゃんはとつとつと語り出した。

*****

「失礼します。ナイトビジネスグループの葵です。」

葵が姫路本社の社長室のドアを開けると、そこでは株式会社アミーゴをまとめる呉エイジ社長がハダカになって乾布摩擦をしていた。

「あ、失礼しましたッ」

ヤバいものを見た、という感じで瞬時ににドアを閉めようとしたのだが、向こう側のドアノブをむんずとつかまれて、閉め切ることができなかった。

ドアノブをつかんでいたのは、さっきまで10メートル向こうで乾布摩擦をしていた社長だった。

「別に構わんよ」

呉エイジ社長。10メートルの距離を一瞬にして移動する男。

加速装置付き?

そして服を着る呉社長。

ここでやっと気がついたのだが、呉エイジ社長のはいているのは、ウルトラマンガイアのプリントの入ったグンゼブリーフであった。

これは、ツッコミを期待しての身をはったボケなのだろうか。葵は悩んだ。

数分後までの沈黙を先に破ったのは、呉社長のほうだった。

「キミ、カワイイね。今度、一緒に南紀白浜のアドベンチャーワールドでも行こうか?」

な、なんでまたそんなローカルでマイナーでオールドな遊園地に?!

「・・・はあ。考えておきます」

「ところで、田村英里子は今何をしてるんだろうね。脱ぐと思ったんだが。」

田村英里子・・・。それ、誰?

呉社長の話は止まらない。

「ウィンクの二人もそろそろだと踏んでるんだが、どう思う?」

新宿から東京駅まで出て、そこから新幹線で大阪まで。そこからさらに新快速に乗って姫路まで来た。

合計で半日くらいかかっている。

あたしは昔のアイドルがヌードになるとかならないとかはどうでもいいのだ。

新宿に帰ったら、たくさんしなくてはいけない仕事があるのだ。

帰ろうと思った。

「あの、あたし、そろそろ・・・」

脱ぐのか?!

脱がへんわ!

そういえば、新幹線のなかで支社長と電話したときに、呉社長についてこんなことを言っていた気がする。

イギリス「呉社長はな、確かにすごい人だ。あの人は一人でアミーゴを創めて、いまじゃ100万の業績をあげようとしている人なんだ。

ホームページを作って、雑誌に連載が決まって、それでもなおかつ事業を拡大してアミーゴ全体を盛り上げようとしている。

だから、今回、社長に会いにいくことはもしかしたら葵ちゃんにプラスになるかもしれない。

でも、基本的に、あまり本気で相手になるな。

支社長の言葉が理解できた気がする。

この人があのアミーゴを統括する社長の呉エイジなんだ・・・。

そう思った瞬間、涙がひとすじ、頬を流れ落ちた。

*****

イギリス「なるほど。それは大変だったな。昔のアイドルトークをさせるために姫路に行かせたわけじゃないのに。」

「でしょう?」

イギリス「目下、問題なのは、なぜ浅香唯がヌードにならなかったのか、なのだよ」

この会社、アホばっかりやん!

この会社を辞めてエーゲ海あたりに逃げるにはいくらくらいかかるのかしら。

葵は遠い目をして、そんなことを考えた。






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