止まらない恐怖!進撃のダダ!!





この物語はフィクションではない。

事実は小説より奇なりというが、世の中にはこういった怪奇現象が実際に起こりうるという実証なのである。

この世に生きるすべての人に伝えたい。

人間の想像を「斜め上」に超える出来事は起こりうるのである。

通常、予想をはるかに超えてしまった出来事を目の前にしたときの最初の反応は、恐怖やパニックではなく、呆気にとられるか、あるいは笑ってしまうかのどちらかだ。

例えば深夜トイレにおきて、部屋のドアをあけたとしよう。

ドアを開けたらそこに白い着物の女性が青白い顔でたたずんでいたらそれはギャグだが、オスマンサンコンが踊っていたらまず事態の理解に数秒の時間を必要とするだろう。

そう。

世の中には、常識からは「え?なんで?」と思うことが多からずあるのだ。

*****

それは、僕が勇気を出して“逆告白”をしたその晩のことだ。

つまり、「付き合わない」と言ったその晩のこと。

ダダ星人は僕に電話をかけ、その電話の中で僕を映画に誘うのだった。

僕: 「えっとね、、、だから、おれと付き合うのは止めておいたほうがいいと思う・・・」

ダダ: 「だって好きだって言ってくれた!」

僕は幼いころ、よく両親にオモチャをねだったものだった。

家族でデパートに行って、オモチャ売り場で駄々をこねると、両親はとりあえずその場しのぎでこう言う。

両親: 「いつか買ってあげるから、今日はガマンしとこーね」

僕はその言葉にだまされて、笑顔で、うん、と答えていたのだった。

しかし当然、子供心にもその言葉は忘れるはずがない。

僕: 「ねえ、前にデパートで買ってくれるって言ったじゃんー」

家でそう言って駄々をこねると、両親はこんな風に僕をたしなめたものだった。

世の中には言葉と現実が一致しないこともあるのだ、と。

一見理不尽に思えることも受け入れていかなければ、社会は成り立っていかない、と。

そしてその点をよくわかった人が器のでかい人間になれるのだ、と。

貴様は、おちょこか?

僕: 「なあ、話のスジが誤解されてるみたいだし、もう一回説明しようか?」

ダダ: 「わかってるって。でもあこがれるなあ、価値観の違いっていう苦難を踏み越えて最後には・・・」

僕: 「ならない」

行き着くところは殺人事件か惑星間戦争しかない。

ダダ: 「わからんで〜?」

僕: 「わかる。てか、いい?よく聞いてくれ、まず、、、」

ダダ: 「あ、ゴメン、また電話するわ、ドラマ始まってる」

僕が引きとめようとするのも半ば無視するように、電話は切れた。

一体何なんだ???

洗脳の初期には、プラスであれマイナスであれ、強烈な印象を残すことが大切だという。

とあるカルト宗教団体は、ひどい犯罪を行なったことで有名になったが、そのことが初期の段階においてはポジティブに作用し、犯罪発覚後にも会員勧誘を行なっているのだ。

それか?

*****

それから数日後。

街はクリスマスに彩られ、赤と緑のデコレーションがそこかしこに飾られていた。

僕らは冬のあいだもウィンドサーフィンをしに白浜の海の家にいく。

自分の大学に行くのは大切な授業がある日だけだ。

その日の午後、僕は大学の食堂で遅めの昼食(カキフライ定食)を食べていた。

目の前に誰かが座った。

ダダ星人だった。

何でここにいるの?

思わずカキフライを吹き出すところだった。

僕: 「・・・何してるの?」

ダダ: 「やっぱり●君だ。運命なのかなあ♪」

後ろに続くように、見たことのない女の子が数人いた。

ダダ: 「テニスサークルだよ。知らなかったん?」

ウチの大学のテニスサークルに入っていたというのは初耳だった。

包囲網が完成しつつあるのか・・・?

食堂は暖房が効いていて、多少暑かったのかもしれない。

僕もコートを脱いだだけでは足りず、シャツのボタンを外していた。

ダダは臆面もなく対面のイスに座り、

ダダ: 「ここ座ってもいい?」

もう座ってるがな。

僕: 「・・・。」

ダダはそこにペットボトルのジュースを置き、コートを脱いで友達にさよならを言った。

おれがオマエにサヨナラしたい。

ダダ: 「ねえ、映画行かへん?」

僕: 「ウィンドサーフィンで白浜行くんだよ・・・」

ダダ: 「え〜、ええやん。別に。たまには友達づきあいも必要やで」

この「友達」の部分を強調する言葉尻に、トゲがある。

何が言いたい?

暑かったのか、ダダはカーディガンを脱いでコートの上へ置いた。

半そでのシャツを着ている。

半そでの袖口の向こう側にはワキ毛が生えていた。

モシャモシャと。

!!

剃らないの? わざとなの? なんで?

見てはイケナイものを見てしまった気がして、思わずカキフライに目を戻した。

すでに食欲はナイ。箸を置いた。

ダダ: 「もう食べへんの?も〜らいッ」

僕: 「・・・。」

新聞紙上で報道される殺人事件には、計画犯罪とそうでないものがある。

後者である場合にはほとんどの場合、「カッとして思わず」犯罪に走ってしまうケースだ。

人間とは理性の動物であり、その理性ゆえ社会生活を営むことができるのであり、「カッとして思わず」走る犯罪は理性を与えた神さまへの反逆であろう。

でも多分、この状況なら神さまも許してくれる。

そのとき、後ろから、「あれ?●やん」と声がかかった。

見ると同じクラブの同輩だった。ダダを見て、

同輩: 「ふ〜ん。またな〜」

憐れみを含んだ笑みを浮かべて彼は去っていった。

違うんだ、コレは!

そして包囲網がまた一つ、出来上がってしまったのだった。





教訓「逃げられない・・・のか?」

 



英国居酒屋
恐怖!その名はダダ星人!!