僕は当時、付き合っていた女のコがいた。 彼女は女子高生だった。 今でも一般的にそうなのかもしれないが、彼女もまた、我が世の春を謳歌する調子ノリまくり女子高生だったのである。 付き合いだしてしばらくした頃のこと。 僕は健全な男子であり、付き合っている彼女がいるのであり、ホモではなく、募る思いはあるカタチになって相手に求めるようになるのは必至であった。 愛を交わす行為をしたい。 (いや、単純にセックスしたい、と書いてもいいんだけど、こういう表現のほうが詩人っぽいよね) 僕はその日、いつものとおり彼女を部屋に招き、明太子パスタを作った。 ガーリックオイルとタバスコは少々多めだ。 彼女「ふぅ〜。おいしかった。ちょっと辛かったケド。あ〜、なんか汗でてきた」 僕「ちょっと辛かったかな? なんか僕も汗かいちゃった。暑いね。脱いでいい?」 長袖のシャツを脱ぎだした僕であったが、 彼女の、白い視線を感じた僕は、そのまままた着た。 ・・・。 僕「ねえ、やっぱり学校で一日中机に座ってたりすると疲れるよね。長時間同じ姿勢なワケだし。おれ、よく親父の肩もみとかさせられたし、マッサージはうまいんだぞ。してあげようか?」 彼女「肩と背中だけでいいし」 ベッドにうつぶせになった彼女は、あお向けになることはなかった。 僕「う〜ん。肩と背中はだいぶコッてるなあ。よし、脚ももんであげよう」 彼女「イヤ」 僕が背中を押しながら、徐々に下に移動してオシリの上くらいまで来た頃、 ぐはッ! 彼女のスコーピオンキックが僕の側頭部にヒットした。 僕「あ、ごめんね・・・」 ・・・。 背中を押しながら、 僕「あ、そうだ。このあいだ友達からすっげー裏ビデオ借りてきたんだ。見る?見たい?」 彼女「・・・。見れば?」 デッキにカセットをセットしてしばらくすると、モザイクなしのアダルトビデオが始まった。 ブラウン管の中では非常に気持ちよさそうにAV女優があえいでいる。 ぬか味噌の壷にキュウリが出たり入ったりしていた(イメージ表現)。 そのときには僕のキュウリも熟れ頃だった。 僕「気持ちよさそうだね〜。あのAV女優」 彼女「・・・。こういうの見てて、楽しいんか?」 これを見てもキミの家は断水状態なのか? ・・・。 僕は何か大きな間違いをしていたのかもしれない。 女のコというのは、こういうとき、ムードを大切にするものなのだ。 こちら側の欲望を丸出しにして迫ったところで、遮断機が上がることはないのだ。 頑丈な南京錠を開けるときにはハンマーで叩くのではなく、一本の針金さえあればいい。 旅人のコートを脱がすには、強い北風を吹かすのではなく、暖かい太陽の光をあてればいい。 僕はそのとき、自分の犯していた間違いに気がついた。 ビデオもテレビも消し、僕は無言のままCDデッキに音楽のCDを入れた。 サザンオールスターズのバラードベストだ。 ボリュームはギリギリまで小さい音で。 彼女のもとに戻り、シリアスな表情のまま、50センチの距離で目を見つめながら。 僕「ボクのエンジェルの肌のぬくもりを知りたい」 白い空気というのはこういうのを言うのだろうか。 なぜかそのとき、時計のアラームが鳴った。 彼女の門限にあわせてこの部屋を出る時間だ。 アラームは「チャルメラ」だった。 彼女は爆笑したあと、 彼女「いや〜、今日はホンマ笑かしてもらったわ。ありがと。それじゃ帰るし、家まで送って」 ・・・。 僕はその日、熟れたキュウリをどうしようかと思いながらも一人で夜の街をドライブした。 夜景がキレイだという九条山はカップルでいっぱいで、僕はなおさら哀しい気分になった。 京都を一望できるという九条山山頂だが、僕はその夜景がかすんで見えなかった。 きっと涙を流していたのだろう。 お月さまがキレイに見える、そんな秋の日の出来事だった。 |