論文の書き方講座


残念ながら普段大学生は基本的な論文の書き方を大学の授業で学ぶことがない。論文の書き方、というのは学生の学ぶ必須事項でありながら、大学側は誰一人として「一般的な論文の書き方」というものを教えないのだ。これは僕のゼミでもそうであり、知る限り他のゼミでもそうであるように思える。また、もしゼミ内で教授していたとしても、それは不公平であり、一般的な書き方、書く上でのルールなどのガイドラインは全学生に対して行われるべきだと思う。特に実験レポートを主とする理系論文と違って、社会科学系論文ではその内容の合理性・説得力に重点が置かれることになり、論文自体の構成がそのものの評価に関わって来ることは自明である。

ここではイギリスで一般的に学生に求められる論文の書き方を紹介したいと思う。どういった骨格でレポート、論文をまとめたらよいかわからないと悩む学生の助けになれば幸いに思う。また、この論文の展開は学問的論文に限らず、会社におけるプレゼンテーション、提出書類の段階的説明においても有用なコンセプトだろうと思われるので、社会人の方も参考にしていただきたい。

Contents

  1. Introduction
  2. Survey
  3. Development
  4. Conclusion
  5. Note
  6. Bibliography

 

これが基本的な構造になる。では、それぞれの内容を詳しく見ていこう。

  • Introduction

ここでは、全体を通じて何を、どういった手法で明らかにするのかを述べる。すなわちその論文の構造をここで一気に説明してしまうのだ。内容まで深く突っ込んで説明する必要はないが、それぞれの章、あるいはChapter、Sectionなどが何の目的で存在しているのか、どういった役割を論文全体のなかで演じているのかをここで紹介する。簡単にその中身を書き出すと、

@.問題提起:何を解明するための論文であるかを書く。

A.手法:そのためにどういった展開・手法で解明するのかを書く。

B.章別説明:それぞれの章が持つ内容と全体における役割を書く。

こういった感じになる。もちろんそれ以外になにかを書いても構わないが、導入部分は、全体像を見渡すことが重要であるので細かいことはあまり書かないほうがよい。

 

  • Survey

いかなる研究もその母体・基盤となる前研究あるいは踏み台が存在する。そこで、自分が書こうとする論文がいったいどういった流れの川下に存在するのか、あるいはこれまでどういった研究がなされてきたのかを説明する必要がある。ここでは自分の意見を言う必要はない。あくまで客観的に最近までの研究結果を紹介すればよい。なぜ自分の意見を言うべきではないかというと、それは、以後のDevelopment(=本論)のなかですべき仕事だからである。批判・賛同いずれにせよ自分なりの納得の道筋があるはずであり、それ抜きの批判・賛同は許されない。言ってみれば、論文全体における「前提条件」のようなものであると思えばいい。この枠組みなしに自分の意見だけをいうことは、枠外からの攻撃に対して無防備なものになってしまう。

  • Development

これはつまり本論のことである。ここから先が書き手の独創性・アイデア・考えに強く依存する部分で、評価の対象になる部分でもある。したがって絶対的な書き方、というのはあまりないのだが、それでも最低限含むべき内容、または書く順序が存在する。

一般に、一つの段落には一つのメッセージしか含んではいけない。そしてそのメッセージは、

@.メッセージ

A.例証

B.説明

C.別の言い回しによるメッセージ

というステップを踏む。もちろん他の書き方も存在する。

この1メッセージを数個集めてもう一段階大きい枠組みでメッセージを構築すると思えばいい。

つまり、

《Sectionその壱》

Subheading T

メッセージ1

メッセージ2

メッセージ3

SubheadingTの結論

Subheading U

メッセージ1

メッセージ2

メッセージ3

SubheadingUの結論

Subheading V

メッセージ1

メッセージ2

メッセージ3

SubheadingVの結論

⇒ 

《Sectionその壱の結論》

とするのである。ここではそれぞれのSubheadingが前提条件の確認・追加的条件・例証だったり、A=B・B=C・したがってA=Cのような三段論法だったりとバリエーションはある。そして今度はSectionその壱からその三まででひとつの結論を導くのである。

 

  • Conclusion

これは結論のことである。この部分では上記本論を簡単な言葉に置き換えながらすべてを繰り返して説明しなおす。別に内容が重なっていても構わない。むしろここで新たな論点・観点から新たな評価を加えることは許されない。それなら本論中で例証・検証とともにすべきだ。強いて許されることがあるとすれば、その論文がもつ限界性・前提条件に言及して今後の研究課題を提示することである。

普通、イギリス式の論文においてはイントロと結論さえ読めばその論文が何をいいたいかは分かる。本論中においてはその検証過程のようなものであって、力の見せ所のようなものだ。ここでの検証に緻密さが欠けると、研究としてはいまいちということになる。したがって、逆にかなりラディカルな意見を言わんとすればそれだけ検証過程が厳しいものになり、検証過程に緻密さを要求するならばまとめで言うべき内容は陳腐さをある程度含んでしまうことになる。

 

  • Note

本論とは関係ないが言及すべき事柄があれば、ここで記す。もし例証・検証を含んで一定以上の長さを持ってしまうような場合はAppendixといって付属的な小論文をつけることもできる。

  • Bibliography

参考にした研究論文、図書の一覧。本論中で引用したものや、引用しなくとも踏み台に使ったものはすべてここに記入する。逆にいえば、このリストからある程度筆者の言わんとすることが推測できたり、かけている点を見出すことができるので、教授は本論を読む前にここをチェックするらしい。

ちなみに外国人の名前ならアルファベット順、日本人の名前なら50音順で並べること。

このとき、

図書なら

苗字・名前(発表年)“(図書の名前)”発行地:発行者

本の一部なら

苗字・名前(発表年)“(論文タイトル)”「(図書名)」発行地:発行者

となる。



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