比較優位
先日、比較優位ってなんですか? という質問がきた。たしかに、絶対的な競争力優位と比較優位の違いというのはわかりにくいものかもしれない。ちなみに英語では、前者が Competitive Advantage で後者が Comparative Advantageである。リカードのワインと布の話が比較優位の説明として有名だと思うのだが、いかんせん、なにぶん、これを習ったのは結構むかしの話なので、詳細についてはちょっと自信がない。異論反論がある人は、メールください。 フランスでは一枚の布を織るのに、 10人の人手が必要で、一本のワインを作るのには6人の人手が必要である。(ここでは「人手」としたが、これは投入費用のことなので、実はカネとしてもOK) 一方で、スペインでは一枚の布を織るのに 12人の人手が必要で、一本のワインには15人の人手がいる。 表にすると、このようになる。
これだけを見ると、布にしてもワインにしても、フランスのほうが安く生産できることがわかるだろう。これが絶対的な競争力である。布にしてもワインにしてもスペインのほうが人手がいるのだから、コスト的には両方ともフランスの勝ち、ということだ。 さて、ここで上の表を、ちょっと翻訳してみたい。上の表は「一枚(一本)あたりにかかる費用」を中心に比較されているが、今度は、「一人あたりの生産量」で比較するのだ。
単純に、逆数にしてみただけのことである。フランスでは 10人で一枚の布を織るのだから、一人あたり1/10だけの生産をするというのは、当たり前のことだ。
ここでクイズ。「ここに一人のフランス人と一人のスペイン人がいます。誰にどの仕事をさせますか?」与えられているのは、布とワインの仕事だけである。ちなみに、暗黙の了解として、一枚の布の値段と一本のワインの値段は同じとする。 ・選択肢その1:フランス人もスペイン人も布を織る。 このとき、生産される布の量は、 1/10 + 1/12 = 11/60
・選択肢その2:フランス人が布を織り、スペイン人がワインを作る。 このとき、生産される布およびワインの量は、 1/10 + 1/15 = 10/60
・選択肢その3:フランス人もスペイン人もワインを作る。 このとき生産されるワインの量は、 1/6 + 1/15 = 14/60
・選択肢その4:フランス人がワインを作り、スペイン人が布を織る。 このとき生産されるワインの量は、 1/6 + 1/12 = 15/60
それぞれの場合の結果を見ると、選択肢4のケースが最も生産量が多いことがわかる。これは、フランス国内では、布生産よりもワイン作りのほうに優位性があるからであり、一方でスペインではワインよりも布のほうにコスト面でいい条件だったから、おこったことである。両国合わせての生産を考えた場合、布生産とワイン生産を分業したほうがよい、という結果になったのだ。 このように、いくつかの条件のもとでシミュレーションを行なった場合、それぞれの国が、国内で最も強みを持つ産業に特化するほうがよい、という結論を得る。言いかえれば、それぞれの国で自慢の産業だけを育成して、世界中で分業すれば、トータルで効率的じゃん、ということである。 もちろん、こんな理論は現実には当てはまりにくいし、数々の反論があるのだが、それはまたいずれの機会にしたいとおもう。 こんな説明で「比較優位」、わかってもらえただろうか。 【補足】 基本的に世界銀行・IMFは新古典派の考えに基づいているので、それにしたがって、構築される世界観も、この「比較優位」に基づくものとなる。つまり、 “途上国は途上国なりの強みをもって、発展すればよい。先進国のマネをして先端技術など学ぼうなど100年早いわ!” ということなのである。
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