当時、宇宙作業用ロボットから兵器として開発されたモビルスーツMS−06ザクの開発、そしてレーダーを無力化するミノフスキー粒子の開発によって、ジオン軍は地球連邦軍を圧倒していた。 地球連邦軍の劣勢は明白なものだったのである。 この危機的状態を挽回するため、連邦軍はV作戦と名付けられた作戦を決行する。 その内容とは、新型モビルスーツの開発、大量生産型モビルスーツの開発であった。 RX−78、ガンダムタイプの開発はここに始まったのである。 ***** テム・レイ大尉「やはりザクに圧倒的な強さで挑むためにはこの新型、ルナ・チタニウムの装甲だけではまずいな・・・。何か他にコレ!というスペックを導入しなければ・・・」 研究員A「自己教育型コンピュータというのはどうでしょうか?」 テム・レイ「ん? なんだそれは?」 研究員A「このモビルスーツが経験した戦闘パターンを認識・記憶することによって次の戦闘パターンに備えるというものです。これさえあれば戦うたびに強くなっていく、そういうスグレモノです」 テム・レイ「いいねえ、それ。それ行こう」 研究員B「しかしそういった人工知能型コンピュータの開発なんて今から始めたらV作戦の発動日に大幅に遅れるぞ。ジャブローに叱られるのはゴメンだからな」 テム・レイ「確かにそうだ。そのコンピュータの開発をゼロから始めるのはリスクが高い。必ずしも開発が成功するとは限らないし、時期が遅れるのはますますもってまずい。連邦は今窮地に瀕しているのだからな」 研究員A「たしかに我々連邦軍にはそのような人工知能型コンピュータのノウハウはありません。しかし、民間の企業にはあるじゃないですか! 接収するのです!!」 テム・レイ「ん? 民間企業? どこだ? それは」 研究員A「"アイボ”を作ったSONYです」 テム・レイ「たしかに今“アイボMk−45”が素晴らしい売れ行きを見せている・・・。しかし、使えるのかね?」 研究員A「SONYが44代目のアイボ開発まで培ったノウハウをこちらのものにしてしまえば可能だと思います」 こうして、SONYの研究員を導入した連邦軍は自己教育型コンピュータの開発、そしてRX−78タイプへの導入を急ピッチで進めることになった。 ***** 自己教育型コンピュータの搭載、そしてビーム兵器を武装として強化された連邦軍の新型モビルスーツは着々とロールアウトの日に近づいていた。 今日はRX−78の動作テストの日である。 RX−78テストパイロット「ガンダム、動きません!」 テム・レイ「左のコンソールにいくつかボタンがあるだろう?」 テストパイロット「なんだ、これ? 『ほめる』、『けなす』、『あやす』??? ・・・『あやす』にしてみるか」 ぽちっ 胸の排気エアダクトからフシューっと白い煙を上げてガンダムは立ちあがった。 テストパイロット「お、やっと立ちあがったか・・・。ん? なんだ? どうした?」 ガンダムはよろよろと歩き出した。 目の前には軍用のジープが走っている。 テストパイロット「ガンダム、勝手にジープを追っています!」 その光景を眺めていた白衣の男。 研究員A「目の前の動くものに興味を覚えているらしい・・・」 テム・レイ「よし、武器を持たせてみろ。ここはコロニーだからな。ビーム兵器はダメだぞ。そうだ、ガンダムハンマーは出せるか?」 ガンダムの近くに巨大なトラックが近づき、そしてかぶせられていたシートがはがされた。 突起物のついた巨大なハンマーである。 テストパイロット「ガンダムの操縦がききません! ガンダムハンマーを・・・転がして? 転がして遊んでいます!!」 テム・レイ「左のコンソールに『しかる』というのがあるだろう? それを押すのだ」 ぽちっ ガンダムの動きが止まった。 テストパイロット「ん? どうしたガンダム? なんだ? コンソールパネルがブラックアウト?」 その様子と無線から聞こえるパイロットの声を聞いていた白衣の男。 研究員A「不貞腐れたか・・・」 テム・レイ「よし、じゃあ今度は核融合エンジンにウラン投入」 テストパイロット「え? 核融合エンジンは半永久的に動くジェネレータではないのですか?」 テム・レイ「いや、今回の燃料補給はご機嫌をとるためのものだ。」 遠くで声がする 「補給、完了しました〜」 ガンダムのメインカメラが一瞬光り、そしてコンソールパネルにも電源が戻った。 研究員のAとBがテム・レイのいないところで会話をしていた。 研究員A「やっぱり再開発かな」 研究員B「あの動作、アイボそのまんまじゃないか。テムのおっさん、このままこれを実戦投入するつもりなのかな」 その視線の向こう側では、テム・レイがうきうきした顔でガンダムを見上げていた。 ルウム戦役で連邦軍が大敗を喫し、レビル将軍が黒い三連星に捕縛されてしまうのはこの三日後のことである。 ちなみに幸か不幸かこのアイボ型人工知能よりもハイスペックな人工知能をテム。レイの息子が数ヶ月後に完成させることになる。 その名はハロ。 |