2003年3月。先日、僕の親友たる一人の女のコ(ミサ24歳・仮名)が結婚した。 恋愛感情こそないものの、気立てがよく料理も上手で、まるで妹のように思っていた。 何回かそのコの家に遊びに行き、巨人戦をテレビで観戦しながら夕飯をご馳走になったりもした。 結婚相手は同じ大学の後輩。 なかなか誠実そうなカンジのヤツで、少なくとも腹は黒くなさそうだ。 そんな彼らの門出に際し、贈り物を考えた。 普通は食器セットとか、調理セットとか家財のいずれかだったりするのだろうが、よくよく考えてみると特にコレといって必要性が高いアイテムが思いつかない。 必要性が高くなければいずれは押し入れに追いやられるのだ。 う〜ん。 それなら食べ物か・・・。 そこまで考えたとき、ふと悪魔のオレが目覚めた。 なんで他人の幸福を喜んでいるのだ? 自分のしあわせは追求しないのか? 第一、彼らは何の障害もなく恋愛から結婚に至ったのだ。 はた目にもとても順調な付き合いだった。 許せん! 贈り物を選択する段階で、何かメッセージを込めなくては。 しかしやはり祝い事であるし、彼らの結婚がめでたいのは確かだ。 絶対に嫌われないようにしながら、気持ちばかりの嫌がらせをする方法はないものか・・・。 通風になるくらいウニでも贈るか・・・? いや、おカネがない。 新鮮さが命である食材を大量に贈るのはどうだろう。 魚!! しかも、やはり安い魚ではダメだ。 めでたいのだから高い魚でないと。 よし、これに決定だ。 僕は真タラ1尾まるごと(5キロ相当)を注文した。 一般家庭でさばけるものではないのは百も承知だ。 恋愛で苦労しなかった分、真タラさばくのに苦労するんだ! これは仮想兄からの愛情なのだ。 ***** 後日。ミサから電話がきた。 きっと真タラ1尾5キロが届いたのだろう。 ミサ: 「あの、●くん。魚ありがと・・・。真タラ?1メートル以上もあってまな板に載らないんだけど・・・」 僕: 「結婚おめでとう。その大きさは僕からのお祝いの気持ちの量だと思ってよ」 ミサ: 「・・・。うん」 僕: 「切り身とか箱詰めのほうがよかった?いやいや、恋愛で苦労しなかった分、包丁で苦労するくらい何でもないさ。だってキミは恋愛の辛さを知らないまま、おいしいところだけを味わってゴールしちゃったんだから。」 ミサ: 「・・・。うん」 僕: 「もうわかってるかもしれないけど、言うね・・・。なんで5キロもする真タラを1尾丸ごと贈ったかっていう理由」 ミサ: 「?」 僕: 「お祝い半分とねたみ半分だ」 ミサ: 「やっぱり」 |