ユキヒロの恋愛
社会人5年目。 今年で27歳。 僕はちょっとした有名商社に勤めるサラリーマン。 仕事にも慣れてきて、それなりの仕事を任されるようになってきたところだ。 このあいだも初めてのIT関係のプロジェクトリーダーを任されて、一応満足する結果を出すことができた。 多分、同期の中では一番の出世頭なのかもしれない。 でも一つだけ納得できないことがあった。 同期の中には結婚して、子供が2人いるヤツもいる。 仕事はそこそこしかできないのに、自分よりも幸せそうな顔をされるとなんかいい気分ではない。 僕が会社近くで買った弁当屋の弁当を食べている横で、ハート型の縁取りがされた手作りの弁当をおいしそうな顔で食べられると、やっぱり納得できない。 しかし。 そのいらだちもその日までのことだった。 僕の趣味は絵を鑑賞すること。 上野の美術館はおろか、週末には地方にある小さな美術館にも足を運ぶ。 彼女と出会ったのは、横浜の美術館だった。 あまり有名ではない日本の画家の作品の前で僕が見とれていたところに、やはり絵に見とれていた彼女が少しだけ体をぶつけてしまったのだった。 トモコ: 「あ!ゴメンナサイ!!」 彼女(=トモコ)は美大の学生だと言っていた。 油絵を専攻していて、風景画を描いているのだという。 絵の趣味が一致して、とても話が弾んだ。 僕の周りには油絵とか風景画、まして日本の画家の話など出来る友人は皆無だった。 気が付くと美術館の喫茶店は閉店時間を迎えていた。 その後、あまり期待していなかったのだが、メールが届いた。 トモコからだった。 それから。 トモコはとても礼儀正しく、いい育ちの女性であることがわかった。 そして何よりとても優しかった。 甲斐甲斐しくウチの散らかっている部屋を掃除しにきてくれたり、手作りの料理を作ってくれるところなんかは、最近の遊んでいる女性にはとてもできないことだろう。 いつのまにか、僕は彼女に夢中になっていた。 中学のとき、一つ上の先輩に激しく恋心を持ったとき以来の、胸の高鳴りだった。 もう、彼女としかつきあえない。 今度会ったとき、彼女に言おう。 結婚しよう、と。 空を見上げると、満月が光っていた。 ユキヒロ: 「見守っててくれよな、お月さん」 ***** 同時刻。 とあるアパートの一室で。 電話をする1人の女性。 トモコ: 「そうそう、もう完璧(笑)。 アタシの魅力っていうか〜♪ なんか1回メシ作りに行ったらメロメロになっちゃってさ〜。 ありゃあきっと5年は彼女いないネ。 え?油絵?うんうん、来週にでも買わせるから。そうねえ、1000万くらいの、いけるでしょ。これで今月のノルマOKね。あ、そうそう。あそこのスーパーの肉じゃが、なかなか使えるヨ」 トモコは下着姿のままあぐらをかいて、ウチワで股間をあおいでいた。 トモコ: 「インキンが治らねーよ(苦笑)」 |