ミドリの恋愛
ジリリリリ。 目覚まし時計のベルが鳴った。 でもアタシはもうとっくに起きていた。 7時の目覚ましよりも2時間も早く目が醒めてしまっていたのだ。 今日は付き合ってから初めてのデート。 アイツ(=ユウスケ)と付き合ってから一ヶ月になるけど、ずっと週末はサッカー部の試合とかがあって、アタシは応援に行くだけだったのだ。 アイツは打ち上げとか反省会とかで、アタシと一緒に帰ることもできなかったワケよ。 まあ、アイツのカッコイイところを見れてそれはそれでよかったんだけど。 で、さすがにアイツも悪いと思ったのか、今日はアタシをデートに連れて行ってくれるんだそうだ。 昨日メールで、 「明日空いてるよな?動物園にでも行く?あ、そうそう、夜は遅くなるかもしれないけどいい?」 アタシはOKという返事を出した。 でもなんで動物園なんだろう。 何か見たい動物でもいるんだろうか? そこでアタシはあることに気が付いて声をあげそうになった。 夜は遅くなるってどういう意味??? え?ウソ・・・。まさか・・・。 まだ高校生だし、そんなことないよね・・・。 うんうん、考えすぎだ。 しかしアタシはいつもより長めにシャワーを浴びた。 着る服も考えた。 前髪、このあいだ切りすぎちゃったかなあ。 今日はイイ顔してるかな・・・? . . . . . . . 動物園。 幼稚園の時以来。 カップルなんていないと思ってたけど、意外にいるものなのねー。 ユウスケはアタシよりも先にスタスタと行ってしまう。 そしてアタシとの距離が離れていることに気付くと少し困ったような、照れたような顔をして、少しだけ立ち止まる。 ねえ、手、つないでもイイ? 目で聞いても、やっぱり答えてはくれない。 何かの動物の柵の前で彼が立ち止まった時。 どうにかがんばって縮めたアイツとの距離も10センチから先が進まない。 何十回もためらったあとに、ワタシの手がとうとうアイツの手に触れた。 がんばって指を絡めてみる。 あ゛〜〜〜、くそぅ。 きっとアタシの顔はインフルエンザにかかったように赤くなってるに違いない。 こんなのはアタシじゃない。 アタシのキャラじゃない。 でも。 手をつないでたいの! 指先にかかる力があった。 アイツが握り返してくれた力だった。 コイツも一応オトコなんだなぁ。ゴツゴツしてる・・・。 きっとアタシの顔はさっきよりも赤くなってるに違いない。 頬が熱くなっているのが自分でもわかる。 顔を上げてアイツの顔を見ることさえできなかった。 動物園のあとファミレスに行った。 ファミレスでは2人でピザを食べた。 その後は、アイツが家まで送ってくれた。 手をつないだだけで、その先は全然なかったけど、満足した一日だった。 今、アタシはパジャマで空を見てる。 空には満月が浮かんでいる。 アイツも見てるかなあ。 ***** 同時刻。 ユウスケの家。 ユウスケ: 「違う。違ったぞ。 オマエはミドリがマンドリルに似てると言ってたが、むしろアイツはギニアヒヒに似ている。 ギニアヒヒのほうが鼻が前に出ている。 よ〜く見較べたから絶対だ。 まあ確かにヒバゴンがもっとも近いのかもしれないけどね(笑)。 で。 アイツが手を握ろうとしてきたから、鼻クソつけてやった」 |