僕がまだ小学校の低学年だったころのこと。 近所には遊ぶのにうってつけな雑木林がたくさんあった。 僕らは学校から帰るとランドセルを放り投げ、戦争ごっこ、虫とり、仮面ライダーごっこをして遊んだものだった。 ただ、それらの雑木林は当然どこかに持ち主がいて、私有地だったわけで。 小学校の先生からも立ち入りを強く禁止されていた。 その雑木林に関しても有刺鉄線で囲いがされている上に、「幽霊が出る」というまことしやかな噂さえ流れていた。 確かに子供が立ち入ってケガをした場合には補償問題とかが厄介になるわけで、そういう噂を大人たちが意図的に流していたとしてもうなづける話だ。 もう一つ、そこの雑木林が遊び場として最適だったのは、そこが不法投棄の場所になってしまっていたことだった。 どこかのテナントから捨てられたと思われるオフィス用品、電気関係の会社が捨てたと思われる電子基盤、飲食店が捨てたと思われる冷蔵庫やキッチン用具・・・。 戦争ごっことか仮面ライダーごっこには最適だったのだ。 その日、僕らは雑木林に入って遊んでいた。 友人A: 「なあ、なんかヘンなのがあるぞ〜。人が死んでる・・・」 友人B: 「え?!」 よく見てみると、それは服飾店が不法投棄したと思われるマネキンだった。数体ある。 近くにそのお店のものと思われる服も捨てられていた。 友人A: 「なんだよ、びっくりした〜」 その日、僕らはいつもの戦争ごっこや仮面ライダーごっこはせず、別の遊びをすることにした。 自殺ごっこ。 遠くから見たら首吊りしているようにマネキンをぶら下げて、近所の人を驚かそうという企画だった。 幸い、そこらに建材屋が投棄したと思われるロープもあった。 僕らは、マネキンに赤いワンピースを着せ、木に登り、ロープをかけ、そのロープにマネキンの首をかけた。 いい出来栄えだったと思う。 僕らはその日、満足して帰宅した。 そしてその日からしばらく、僕らは別の遊び場での遊びに夢中になって、雑木林のことは忘れていたんだと思う。 ある日、僕らが自転車で探検ごっこをしていたとき。 雑木林の前を通り過ぎようとしたとき、そこにパトカーが止まっていた。 あ、あのいたずらだ! 怒られる!、と危険を察知した僕らは逃げるようにその場から立ち去った。 きっとあのいたずらをした子供を警察や学校、雑木林の持ち主は探しているはずだ。 そう考えた僕らは誰にも秘密にするという固い約束をした。 驚くべきはここからの展開だ。 次の日学校へ行くと、女子がひそひそと何かを話していた。 僕: 「なに?どうかしたの?」 女子A: 「自殺があったんだって〜」 前日、例の雑木林にパトカーが止まっていたのは、自殺があったためらしい。 30歳前後の女性が首吊りをしていたのだ、と。 そして。 女子A: 「赤い服着てたんだって」 |