僕たちが生活する日本。
社会に生活する人々はすべての人間が善なる神であるわけではない。
ふとしたきっかけで心の中にある闇が精神を支配し、悪の手先になりうるのは実はカンタンなことのなのかもしれない。
しかしそれでも僕たちは毎朝眠い目をこすってベッドから起き、上司の目を伺いながら適当に仕事をし、そして夕方には帰宅してお風呂に入って寝ることができる。
例え一瞬の殺意がわいたとしても無能な上司の下でもガマンして働くことができ、ヨメの理不尽ないびりに怒りを覚えたとしてもなんとか丸く収めることによって生活がなりたっている。
これを平和と呼ぶのであれば、僕たちの平和は、心の中の闇を表に出さないことで成り立っているともいえよう。
つまり僕たちの平和は、第一に僕たち自身の中にある闇の部分をいかにして抑制するかという点にかかっているのだ。
悪の秘密結社ビジョーンは僕たちの中にある隠された闇の部分を顕在化させることによって日本の支配、世界の壊滅と支配を目論む集団である。
日本にはこの悪の秘密結社に立ち向かう勇敢な5人の戦士がいた。
彼女たちのおかげで我々の平凡でつまらない毎日は守られているのだった。
しかし、僕たちはその勇敢な戦士たちのことをまったく知らない・・・。
*****
悪の秘密結社ビジョーンが街で暴れている−−−!!
都内某所のカレーショップ。
どこにでもあるようなカレーショップだ。
イチオシのメニューはダイエット&ヘルシーカレー。
美容と健康にいいというふれこみのカレーだが、働いているアルバイトの女のコを見る限り効果のほどは極めて疑問だ。
このカレーショップはひとたび市民の悲鳴が聞こえると、そこは妄想戦隊ブスレンジャーの秘密基地に様変わりする。
数年前までカレーショップの地下には実は現代科学の粋を集めた高性能コンピュータで囲まれた司令室があり、世界中からあらゆる情報が瞬時に集まるようになっていた。
しかし今ではエステ情報やカンタンにできるダイエット方法などの情報が集められているだけだ。
そして横にはスクランブル出動を可能にするスーパーバイクと武器の数々があったはずだった。
しかし今では高級エステとダイエット器具のほうが占めている面積は大きい。
そして今日も街でビジョーンが男性を襲っているという情報が・・・・。
長官「代々木公園で行なわれているジュノンボーイの公開選考会にビジョーンが現れたそうだ! 妄想戦隊ブスレンジャー、出動!!」
先頭を切ってバイクにまたがったのはブスレッドだ。
ブスレッド「」
ブスレッドはみんなのリーダーであり、熱血漢。
長官はその後ろ姿をみて、やはりリーダーにはこいつしかいない、と思った。
そしてその後ろを追ってタイヤの音を軋らせる3人の勇者たち。
ん?・・・3人?
ふと見ると横でブスイエローがまだカレーを食べていた。
長官「さっさと逝けよ、デブ!」
デブはバイクに乗ってアクセルをギューンをふかした。
最高速度時速300キロを誇るスーパーマシンがエズゾーストノートを響かせてガレージから出て行く。
しかしどう考えてもそれは時速30キロくらいしか出ていなかった。
重すぎるのである。
ビジョーンが現れたというジュノンボーイの選考会ではイイ男が集まっていた。
ホホホホホ!
ボンデージ姿のビジョーン将軍(藤原紀香似)がイイ男たちに向かってムチを揮っていた。
ノリカ「アタシに苛められたいヤツはどいつだい?誰がアタシに癒してほしいんだい?」
ビジョーンは世の男すべての心の中にある闇の部分を拡大し、美の虜にすることによって世界の支配を企んでいるのだ。
すでに紀香の前には全員のイイ男がひざまづいていた。
ブスブルーがバイクを紀香に体当たりさせて、そして自分は空中で一回転して着地した。
ブスブルー「」
続いてブズグリーンがバイクに備え付けられているマシンガンをぶっ放す。
ブスグリーン「」
ノリカは立て続けの攻撃に一瞬ひるんだが、それでも致命的なダメージは受けていないらしい。
4人の戦士に向かって、一斉にセクシーフェロモン攻撃を行なった。
ブスレンジャー「ああああああッ!」
そのときの秘密基地では長官がコブシを握り締めて叫んでいた。
長官「いけー、やっちまえ!」
長官はすでにビジョーンの応援にまわっていた。
ノリカの攻撃のあとの一瞬のスキを突いてまたもノリカを攻撃したのは戦隊の中でも最悪の性格を誇るブスピンクだ。
ブスピンク「」
どうやら年齢がノリカの弱点だったようだ。
よろめいて動きが止まった。
ちょうどそのとき、時速30キロで走ってきたブスイエローが到着した。
バイクを降りて大地に立つ!
ブスイエロー「」
ブスレッドが叫ぶ。
ブスレッド「今よ!」
ここで必殺のコンビネーション技が始まった。
敵将軍の極めて近くで5人が次々と汗臭いマスクをとってスッピン素顔を見せるという最強の極め技。
囲まれた敵将軍は身動きもとれないままそれを直視する!
ブスレンジャー「スッピンフェイスフラッシュ!」
こんなに醜い顔が存在するなんて!
ノリカは強烈な精神的ダメージを受けて、自分の基地に瞬間移動した。
こうして今日も世界の平和は守られたのである。
多分、この日の出来事もニュースには乗らないであろう。
例え新聞に載ったとしても悪人顔なのはむしろブスレンジャーなのである。
しかし妄想戦隊ブスレンジャーは有名になるために戦っているのではない。
彼氏を捜すために戦っているのである。
5人のブスレンジャーは、近くで戦いの余波を食らってうめき声を上げているジュノンボーイ候補たちにかけよった。
ブスレンジャー「大丈夫ですか?!」
極めて近くでブスレンジャーのスッピン素顔を見た彼らは、わずかに残っていた生命力も奪われてしまったらしい。
次々と死んでいってしまった。
こうして5人の勇者たちは戦地を後にした。
秘密基地では長官が葉巻を吹かしながらディスプレイに映るその光景を眺めていた。
長官「」
そして彼女たちの戦いは今日も続いている。
【完】
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