若さゆえの過ち




「認めたくないものだな、自分自身のの若さゆえのあやまちというものは…」

この有名な言葉は、激戦を駆け抜けた一人の勇敢な戦士が遺した言葉である。

彼がこのセリフを言った背景には、戦功をあせって、大事なモビルスーツを失ってしまったことにあるのだが、今回の話はそれとはまったく関係ない。

当時、僕は高校に入ったばかりだった。もう『ヤりたい盛り』の時分である。しかも、『Hすること』の中身が具体的によくわかっていなかったので、それに対して、過剰な期待を持っていた。

『風呂上りのヤクルトなんかの100倍くらいは気分爽快のハズ』、『この世にいながらにして天国にいけるハズ』といった妄想を描いていた。

まだHしたことない若者は、心して聞いて欲しい。

『過剰な期待は禁物』

と一言だけいっておく。

実際のところは、風呂上りヤクルトの50倍くらいの気持ちよさに過ぎない。

したがって、その中身がどんなものかわかってしまった現在の僕と、過剰な期待を持っていた当時のは結構別人であると思って欲しい。

 

僕は、センター街のPRONTでコーヒーを飲みながら、その女のコが来るのを待っていた。戦闘準備は万全であった。

バブル華やかなりし頃だったので、高校生といえども、ブーツやアニエスのシャツ、ポールスミスのジーンスなどのインナーに加え、アウターも含めると全身で10万円くらいは投資していた記憶がある。そしてポケットには「うすうす」が3つ(笑)。

話は数日前にさかのぼる。いつものように、昼休みに某部室で先輩らとくだらない話をしていた時。

「M先輩、どっかに簡単にサせてくれる女のコいないっすか_?」

僕なんかよりもはるかに渋谷高校生事情に通じていたM先輩のもつコネは驚愕モノである。

M先輩「簡単にマタ開くオンナねえ…」

結局頼み込んで、次の日に、一つの電話番号を教えてもらった。『ヒマな後輩がいるんだけど、年下が好きなコいる?』ということで出てきた女のコだったということだ。

つまり、その女のコは高校2年。そしてK女子高校。誤解を恐れずに、当時の評判をいうならば、『超イケイケのバカ学校』であった。

そしてその女のコはM先輩曰く、『超遊び人』ということだった。

僕はその日のうちに、電話をかけた。今に思えばかなり思いきったことをしたと思うが、性欲に燃えたオトコは無敵である。

「あの〜、三河屋ですけど(笑)」という言葉で始まった適当トークも冴えまくりであった。

そして、その週末のデートを取り付けることに成功したのだった。


こういう、『初めて会う女のコを待つ瞬間』というのは、ドキドキものである。

そして当然のように、超カワイかったらどうしよう、とか、 ここで運命の出会いがあって、将来結婚することになったらどうしよう、とかそういうくだらないことを考えていたりするのである。


今から思えば、西田ひかるみたいな、カワイイ娘だったらいいなあ、と考えていた僕の思考を神様は知っていたのかもしれない。

待ち合わせ時刻近くになると、どうしても入ってくるお客さんすべてに目が行ってしまう。心の中では、ひとりごとをつぶやきまくりである。

(あ、あの人か? いや、お姉さんすぎるな)

(あの娘だ!!カワイイ!! 超OK!!……いや、違うか。オトコ付きかい)

(小学生がこんなとこに出入りするなよ〜)

(あのおじさん、あんな若いお姉さんと手なんかつないで、不倫か?)

(プ。なに、あのコ、へんな顔。……なんか誰かに似てるな、誰だっけ)

コーヒーをすすった。

(ん? え? あのコ? なんでこっち見てるんだよ。なんでこっち来るんだよ。え? ウソ)

「○○クン?」

一瞬の間をおいて、その目の前に立つ女のコが誰に似ているのか、思い出した。

西田敏行だった。

僕のなかで何かが音をたてて『萎えて』いくのを感じた。





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