もとアイドル

〜芸能人〜

一般的にどうなのかはわからないが、高校生のとき、渋谷やら新宿をぶらぶら歩いていると、

芸能人を見かけることがよくあった。俳優や女優、アイドルがいたとしても珍しくはないのだ。

新宿駅で元光GENJIの赤坂晃を見かけたこともあったし、赤坂見附で乗った地下鉄に

京野ことみが乗っていたこともあった。

たしかに京都でもバイト先のBarに芸能人が来店することもある。

しかしちょっと趣が違う。

「みのもんた」「若林豪」「中村橋ノ助」といった方々であって、

若い芸能人を見かけることはあまりない。

東京のテレビ局を中心に活躍しているのだからあたりまえだが。

今回の話は、そんな芸能人との話である。

その日のことはよく覚えている。5月の第3土曜日、午後のことだ。

僕は田園都市線沿線に住んでいた。「金曜日の妻たちへU」の舞台となった場所、

といってわかる人はいるだろうか。

そしてそこから電車で渋谷まで通っていたのである。

途中駅には二子玉川園という駅がある。そこは田園都市線と大井町線の乗り換え駅である。

 

さて、僕は友達と渋谷に買い物に出かけた帰りだった。

いつもたいした買い物ではない。「Check Mate」やら「Hot Dog Press」に載っているような

ショップを巡るのが僕らの暇つぶしだった。

スラップショットとShipsが僕のお気に入りの店だった。

その帰り、友達らは京王線で帰り、田園都市線方面は僕一人だった。

そして、大して混んでもいない電車に乗って、家に帰るときのことである。

つり革につかまって、ぼーっと外を眺めていた。途中、停車する駅の反対側ホームでは、

たまにカワイイ女子高生たちが仲良くおしゃべりをしていた。

「あ〜、なかまに入りてぇ」

でも、わざわざそれだけのために、電車を下りて、反対側ホームに行き、

一人で声をかける、なんていうまどろっこしいことはできないのであった。

ふと、横を見た。

特にこれといった理由はない。

ただ、その女子高生軍団のなかに、

「武蔵丸」を発見してしまったために、思わず目をそらしてしまったのだ。

あ〜どすこい、どすこい

心の中でシコを踏んだ僕は、罪な人だろうか?

しかし、心の中のシミュレーションでは僕はあっけなく「浴びせ倒し」で負けていた(笑)。

顔をそむけた先には、ものすごい美人がいた。

顔なんて鞠のようにちっちゃくって、でも胸は大きくて、ウェストは引き締まり、

脚はめちゃめちゃ長かった。

アジア系を思わせる顔立ちだった。

あれ?

どっかでみたことあるぞ?

具志堅ティナだった。

みなさんはご存知だろうか。

「ぼくらの七日間戦争2」で渋谷琴乃とともにヒロインを演じた、沖縄出身のアイドルである。

アムロの大先輩といっても過言ではあるまい。

たしかにその映画自体、当時にしても過去のものだった。

具志堅ティナがアイドルとして売れていた時期も過去のものだった。

それでもやはりそれなりに実績を持つ女の人である。

カラダの線はめちゃめちゃイイ!

やせているのに、巨乳。

ホモを除くすべての男があこがれるスタイルなのではないだろうか。

 

しばらく横目で眺めていると、彼女は二子玉川園で下車した。

僕は、下りる必要もないのに、一緒に下りた。

フラフラとフェロモンに吸い寄せられたようなもんである。

僕「あの、失礼ですけど、具志堅ティナさんですか?」

きっと、ファンからのサインのおねだりには馴れていたのだろう。

突然の背後からの声にも驚かず、ニコっと微笑んで、そうです、と向かい合ってくれた。

その瞬間、僕はファンになった(笑)。そういうもんである。

しかし、次の僕のセリフには驚いたはずである。

「あの、ヒマなら、マクドナルドとか…おごって♪

(↑当時マイブームだったナンパ用の言葉)

電車から下りたホームである。

片や一応アイドルタレント。片や制服の高校生一人。

なんで突然マクドおごらなあかんねん

果たして。彼女は天然ボケだったのだろうか。

僕の突然の申し出に対して、

「あ、でもあたし、いま電車から下りたところだし…」

ぜんっぜん、関係ないやん。

電車から下りることとマクドが彼女の頭のなかでどういった関係にあったのか、未だに謎である。

そして、大井町線の電車がくるまで、心理的な駆け引きが行われたのであった。

 

つづく

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