普通のデート

一人暮しを始めたのは、高校を卒業し、大学生になってからのことだ。

一人暮しというのは、たとえ風邪ひいても自分で炊事洗濯しなくちゃいけないという点で

不便かもしれないが、それ以上に、自分のペースで生活できるという

素晴らしい利点がある。

なにより、親の目がないというのは、かなりイイ。

もちろん、高校生のときにつきあってた女の子がいなかったわけではない。

しかし、ウチに連れてくるということはなかった。

なんせ、東京の場合、遠いのだ。

電車で一時間という距離でつきあっていても全然普通である。

したがって、京都のように気分次第で部屋に呼んだり、

夜中まで一緒にいたりなんてことはできなかったのだ。

今回は、一人暮ししてから初めてつきあった女の子との普通の日の話。

ある日のこと。

部屋に戻ってみるとすでに彼女が部屋にいた。

ベッドを陣取って寝ていたのだ。

起こさないようにしながら、仕方がないので買ってきた雑誌でも読もうと机に向かう。

すると、かわいらしい字で書かれた僕宛てのメッセージ。

「おかえり。この宿題おねがいね♪」

見ると、授業中に配られたとみえる数枚のコピーと、一枚の問題が。

「〜を読んだのち、要約し、意義と問題点についてまとめよ」

と書かれていた。

おいおい。

僕が家に帰ったのは夕方の4時くらいだったが、終わった頃には8時近くになっていた。

終わる頃、彼女が目を醒ました。

彼女「ん〜おはよ」

僕「おはよ。なんでおれにやらせておまえは寝てんねん」

机に向かいながら、一応反撃してみる。

彼女「ええやん。あたしがやるよりも早いんやし。なぁ、ところでごはんないの?」

僕「ああ、買い物行かなあかんかってん」

彼女「じゃあ、はよ終わらせて行ってきてーや」

ニコっと微笑むと彼女は再びベッドにもぐり込んでしまった。

ずいぶんと勝手なヤツだ。

近くのスーパーは確か8時半までだ。

適当に買い物をし、帰ると、彼女はテレビを見ていた。

この買ってきた食材で彼女が何かを作ってくれるのか、というとそうではない。

彼女「あたし、いつものね」

そう。彼女は僕の作るチャーハンが好物らしい。

僕が野菜を切り、肉をバラし、そしてごはんを炒める段階になると、

彼女「ちょー、うるさいわぁ、そこ閉めといて」

といって、部屋とキッチンの間のドアを閉めてしまう。

テレビのドラマに夢中なのだ。

僕は隔離された空間で黙々とチャーハンを作る。

そして、チャーハンとウーロン茶を持っていき、食事となる。

それを食べ終わった後、後片付けも僕がする。

しかしそれは彼女が帰ったあとの仕事だ。

テレビを見ながらまったりしているとき、彼女は肩を揉むように言った。

僕は肩を揉みながらテレビを見ていた。

確かTVタックルだった。

田嶋陽子が熱弁を奮っている。

「だからね、これまで女性はオトコにこき使われて、虐げられてきたの」

「炊事やら洗濯やら食事の準備、あげくには肩を揉め」

「これからは女性も立ち上がって、男性社会を破壊していくべきなのよ」

ババァ、何ふざけたことぬかしてんねん。

彼女「…ねぇ、なんかいいたいこと、あるの?」

僕「ううん、なんにもないよ♪…あ、コーヒーいれよっか」

こうして平穏な時は過ぎていく。

そしてしばらくのちに、クルマで彼女を送り、僕は台所で食器を洗うのであった。

教訓「田嶋陽子の主張はもはや時代遅れ」

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